本妙寺 (豊島区)

本妙寺（ほんみょうじ）

東京都豊島区巣鴨5丁目に位置する本妙寺は、徳栄山と号する法華宗陣門流の寺院です。総持院とも称されます。この寺は、1572年に智存院日慶によって開山されました。

歴史

開山と初期

本妙寺の創建には、徳川家康の家臣であった久世広宣、大久保忠勝、大久保康忠、阿倍忠政らが深く関わっています。彼らは、三河国の古刹である海雲山長福寺の檀家であり、家康が岡崎から浜松へ移る際、日慶上人に願い出て寺を建立しました。1590年、家康が江戸城に入ると、久世広宣と大久保忠勝は寺を武蔵国豊島郡の江戸城清水御門内へ移しましたが、すぐに御用地となり、飯田町に再移転しました。この時、本妙寺は伽藍が壮麗で「板屋寺」と呼ばれ、その評判は家康の耳にも届いたといわれています。

江戸時代

1603年、家康が征夷大将軍に任命された後、本妙寺は類焼により牛込門内へ移転しました。この移転にも、久世、大久保、阿倍の三氏が尽力しました。1616年には安藤対馬丸の援助を得て小石川に移り、本堂、客殿、鐘楼が建立されました。しかし、1636年には再び火災により焼失し、久世家の尽力で本郷丸山に移転、客殿や庫裡を再建しました。この地には約270年間留まり、「丸山様」と称されるようになりました。最盛期には、約1,620平方メートルの敷地に本堂、客殿、書院、庫裡、鐘楼、そして12の塔頭が建ち並んでいました。

明暦の大火

1657年の明暦の大火（振袖火事）は、本妙寺が火元であるという説がありますが、実際の火元は不明です。火事の原因には様々な説があり、反逆分子による放火説や、都市改造のために本妙寺が火元にされたという説もあります。また、老中・阿倍忠秋の屋敷が火元であったという説も存在し、幕府の威信を守るために本妙寺が火元を引き受けたという説もあります。大火後、本妙寺はなぜかお咎めを受けず、数年後には元の場所で復興し、さらに「触頭」へと昇格しています。

近代

1908年から3年をかけて、本妙寺は本郷から現在の巣鴨の地に移転しました。この移転は、明治26年に焼失した総本山の本成寺再建のため、塔頭を廃して行われました。1941年には、本妙寺は総本山本成寺の別院となり、1945年の東京大空襲で鐘楼と山門の一部を除き全てを失いました。しかし、本尊や一部の書物は守られ、戦後復興を果たしました。

文化財と著名人の墓所

本妙寺には、以下のような文化財や著名人の墓所があります。

東京都指定旧跡
遠山景元墓（江戸町奉行、通称「遠山の金さん」のモデル）
著名人墓所
久世大和守家（老中を務めた譜代大名家）
本因坊家（囲碁の家元）
天野宗歩（将棋の名手）
千葉周作（剣術家）
森山多吉郎（幕末の英語通詞）
遠山景元
旗本大屋家（大屋吉正の子孫）
竹内久一（彫刻家）
清水晴風（作曲家）
清水建設物故社員慰霊塔

関連寺院

総本山：長久山本成寺（新潟県三条市）
本山：光了山本禅寺（京都府京都市）、常霊山本興寺（静岡県湖西市）
別院：長松山本法寺（富山県富山市）、霊跡別院 俎岩山蓮着寺（静岡県伊東市）
関東教区の寺院：妙行寺、善心寺、大久寺、法光寺、本通寺、持法寺、立行寺、本光寺、長應寺、理性寺、霊妙寺、霊通寺、善生寺、立正院、豊顕寺、勧行寺、本應寺、蓮着寺、光厳寺、妙向寺、誠諦寺、玄徳寺、萬徳寺、萬徳寺生実布教所、養行寺など

まとめ

本妙寺は、その歴史の中で何度も移転や火災に見舞われながらも、多くの人々の信仰を集めてきました。特に明暦の大火の火元説は有名ですが、その真相は今も不明のままです。文化財や著名人の墓所を有し、歴史的にも重要な寺院と言えるでしょう。現在も法華宗の寺院として、地域社会に貢献しています。

参考資料

鈴木陽傅『徳榮山史考』本妙寺、1973年
黒木喬『明暦の大火』講談社、1977年
宮口昭英『本妙寺と明暦の大火（振袖火事）再考』徳栄山本妙寺布教部、2001年

外部リンク

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