本山漸

本山漸は、天保13年8月23日（1842年9月27日）に静岡県に生まれ、大正9年（1920年）5月4日に80歳で没した日本の海軍軍人です。その生涯を通じて明治期日本の海軍創成期から発展期にかけて重要な役割を担い、最終的には海軍少将まで昇進しました。また、教育分野における貢献が大きく、海軍兵学校校長を二度にわたり務めたほか、海城中学校・高等学校の設立に商議員・議定員として関わったことでも知られています。

海軍に入隊後、本山は海軍繰練所で海軍の基礎を学びました。着実にその実力を認められ昇進を重ね、明治5年（1872年）6月24日には軍艦「筑波」の艦長に初めて補されます。その後も明治9年（1876年）9月12日、明治10年（1877年）8月23日と、三度にわたり「筑波」艦長を務めるという稀有な経歴を持ちます。さらに明治10年11月1日には軍艦「富士山」の艦長も務めるなど、初期の帝国海軍において艦隊指揮官としての経験を積みました。

本山漸のキャリアにおいて特に重要な位置を占めるのが、海軍の教育機関における職務です。明治11年（1878年）3月4日に海軍兵学校教務課長に就任したのを皮切りに、同年7月12日には海軍兵学校次長を経て、同年12月8日には早くも海軍兵学校の校長に任命されました。これは彼が海軍士官育成の中心的な役割を担うこととなった、大きな転換点でした。

明治15年（1882年）8月21日には海軍大佐に昇進。その後も多岐にわたる要職を歴任します。軍務局法規課長を複数回務めたほか、明治21年（1888年）8月16日には海軍大学校の次長兼教頭に補されました。さらに海軍技術会議議員、軍事部や総務局への出勤、海軍機関本部勤務の兼任など、その職務は広範にわたりました。また、士官の学術検査、将校及び生徒の教育法、艦隊職員条例や軍艦職員条例の改正案起草、海軍語類の編纂といった、海軍組織の基盤に関わる各種委員会のメンバーとしても活動し、その近代化に尽力しています。

明治23年（1890年）9月24日、本山は海軍少将に昇進します。これと同時に、彼は再び海軍兵学校校長に補されました。一度目の校長職に続くこの二度目の任命は、教育者としての彼の能力と実績がいかに高く評価されていたかを如実に示しています。この二度目の校長職を明治26年（1893年）2月27日まで務めた後、休職となり、同年5月24日には予備役への編入が命じられました。さらに明治33年（1900年）8月1日には後備役となり、第一線の任からは完全に退きました。

私生活においては、二女の豊子は初代海軍技術研究所研究部長を務めた大石鍈吉に嫁ぎ、三女の政子は元ゼオライト工業社長である野坂康二の妻となりました。

栄典についても、その功績が認められています。明治5年4月15日には従六位に叙せられ、没後の大正9年（1920年）5月4日には正四位を追贈されました。これらの栄典は、彼が生涯を通じて海軍に捧げた功績に対する国家からの評価を示すものです。

本山漸は、黎明期から発展期にかけての日本海軍において、艦隊の指揮、組織の運営、そして最も重要な人材育成という多角的な側面からその発展に貢献した人物です。特に海軍兵学校校長を二度務め、多くの有為な海軍士官を世に送り出した功績は、その後の日本海軍の発展に計り知れない影響を与えたと言えるでしょう。

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