本島等

本島等（もとしま ひとし）

生涯

1922年2月20日、長崎県南松浦郡北魚目村（現在の新上五島町）に生まれた本島等は、カトリック教徒の家系に育ちました。洗礼名はイグナチオ・ロヨラ。旧制高校在学中に徴兵され、見習士官として大砲の指導にあたりました。終戦時は熊本で砲兵少尉への昇進を目前にしていました。戦後、京都大学で土木工学を学び、卒業後は教員生活を経て、政治の世界へ足を踏み入れました。

政治家としての歩み

1959年、長崎県議会議員に初当選し、5期20年を務めました。その後、1979年の長崎市長選挙で現職を破り、市長に就任。4期16年にわたり長崎市政を担いました。

昭和天皇の戦争責任発言

1988年、昭和天皇の戦争責任に関する市議会での質問に対し、本島は「天皇にも戦争責任はある」と発言。自身の従軍経験や海外の報道を踏まえ、天皇が終戦の決断を遅らせたことが沖縄戦や原爆投下を招いたと指摘しました。この発言は大きな波紋を呼び、自民党県連から顧問を解任され、右翼からの激しい非難を浴びました。

銃撃事件とその後

1990年、右翼団体によって銃撃されるという事件に遭いますが、奇跡的に回復。「犯人を赦す」と語り、その姿勢は多くの人々に感銘を与えました。1991年の選挙では、日本共産党を含む左派勢力の支援を受け4選を果たしましたが、1995年の選挙で落選し、政界を引退しました。2007年、後任の伊藤一長が銃撃事件で死亡した際には、「2代にわたり市長が銃撃されるのは異常」とコメントしました。

原爆投下に対する見解

本島は、原爆投下について「落とされるべきだった」と発言し、大きな議論を呼びました。彼は、日本の戦争中の非人道的な行為を考慮すると、原爆投下は「報復として仕方がなかった」と主張しました。この発言は、被爆者団体や右派から強い批判を受けましたが、本島は自身の信念を曲げることはありませんでした。

彼は、原爆の非人道性を認めつつも、それ以前の日本軍による残虐行為を同等に非難し、日本人の戦争責任を強く訴えました。原爆は、当時の技術水準では通常兵器の一種であり、現在の核兵器とは比較にならないと述べました。また、日本人が抱く原爆観は世界に通用しないとして、日本全体が謝罪する義務を負っているという考えを示しました。

その他の活動と晩年

2002年には、韓日平和交流功績賞やドイツ功労勲章を受章。また、左翼過激派とも交流を深め、中核派の機関紙に寄稿するなど、晩年まで活動を続けました。2012年には秋月平和賞を受賞し、2014年10月31日、肺炎のため92歳で亡くなりました。

関連書籍

『長崎市長への七三〇〇通の手紙』
『長崎市長のことば 本島等』
『昭和を生きて』
『タブーへの挑戦：本島発言に市民は』
『天皇制と小さな民主主義：本島長崎市長銃撃に抗する市民たち』
「なぜ平和宣言で「謝罪」を言ったか」
「広島よ、おごるなかれ―原爆ドームの世界遺産化に思う」
『赦し 長崎市長 本島等伝』
『原爆・戦争・ヒューマニズム　「本島等の思想」』

関連項目

進歩的文化人
昭和天皇の戦争責任論
長崎市長銃撃事件
* 若島和美（旧姓・田尻）

もう一度検索