本渡城

本渡城（ほんどじょう）

本渡城は、熊本県天草市本渡町に存在した中世の山城です。連山の東端尾根に位置し、かつては天草地方を支配した天草氏の重要な拠点の一つでした。

立地と構造

本渡城は、標高76mの地点に本丸を構え、その周囲を曲輪で固めた構造を持っています。本丸からは、南西と南東方向に堀切が設けられ、それぞれ幅7-8m、長さ100m以上の急峻な尾根が続いていました。この地形を活かした防御構造が、城の堅牢さを物語っています。

城内には、本丸のほか、馬責め場、一の丸などの地名が残っています。南東端に位置する一の丸には、城主や木山氏の墓、板碑などが現存しており、歴史的な痕跡を今に伝えています。さらに、一の丸から下った場所には二の丸があり、現在は天草切支丹館が建てられています。

歴史

16世紀に入ると、本渡城を拠点とした天草氏は、天草五人衆の中で最も有力な存在となりました。天正年間には、天草鎮尚・久種兄弟が下島中央から南部を支配し、本渡城は本城に次ぐ重要な役割を果たしました。

しかし、天草五人衆は豊臣秀吉に領土を安堵されたものの、小西行長の宇土城普請を拒否したことから、天正17年（1589年）に合戦が勃発します。天草氏は志岐氏と共に本渡城に籠城し、加藤清正・小西勢の攻撃に抗戦しました。この戦いでは、木山正親も客将として参加し、討ち死にを遂げたと伝えられています。

ルイス・フロイスの記録によると、加藤勢は高台から本丸を攻撃し、城兵や家族をほぼ全滅させたのに対し、小西勢は教会などを含む領域を包囲し、城兵や司祭を多く助けたとされています。この戦いによって、本渡城は落城し、天草氏の勢力は一時的に衰退することとなりました。

現在

現在、本渡城跡には石碑などが建てられ、往時を偲ぶことができます。また、二の丸に建てられた天草切支丹館では、天草地方のキリシタン文化に関する資料が展示されており、歴史を学ぶことができます。

参考文献

角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典（43.熊本県）』、角川書店、1987年

関連項目

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