本田靖春

本田 靖春（ほんだ やすはる）

本田靖春は1933年3月21日に朝鮮京城府に生まれ、2004年12月4日に71歳で亡くなった、日本の著名なジャーナリスト兼ノンフィクション作家です。彼の父は朝鮮総督府の官僚であり、その後日本高周波重工業に転職しました。家庭内では非常に厳しいしつけが行われ、清廉潔白な管理職であった父の影響が彼の生涯に色濃く影響を与えました。

本田は東京都立千歳高等学校を経て、早稲田大学の政治経済学部新聞学科を卒業。その後、1955年に読売新聞社に入社し、社会部にて活躍を始めました。彼は、朝日新聞社の深代惇郎記者と共に警察取材を受け持ち、多くの事件を鋭く分析しました。特に、1964年の売血事件を追った「黄色い血」キャンペーンでの取材は、彼が自身で売血を体験することで真実を掴み、その結果として献血事業の改善に大きく寄与しました。この功績からは「東の本田、西の黒田」と称されるほどのエース記者として名を馳せました。

しかし、60年代の後半には、上層部からの企画の押しつけに失望し始め、退社を考えました。その後、ニューヨーク支局での勤務を経て1971年に読売新聞社を退社。退社後はフリーランスのルポライターとして、様々な社会問題に対する鋭い視点を持った作品を発表しました。1984年には、売春汚職事件をテーマとした『不当逮捕』で第6回講談社ノンフィクション賞を受賞しました。彼の主な著作には、吉展ちゃん事件を扱った『誘拐』（1977年）や金嬉老事件を取材した『私戦』（1978年）などがあります。

2000年には糖尿病の影響で両脚を切断し、さらに大腸癌をも患うこととなります。その年から『月刊現代』にて「我、拗ね者として生涯を閉ず」という連載を開始しましたが、46回で中断されました。彼の精緻な取材スタイルは、多くの若手ノンフィクション作家からも尊敬される存在となったのです。

また、趣味として麻雀も楽しんでおり、阿佐田哲也からもその実力を認められ「昭和の雀豪」としても知られています。競馬にも熱中しており、日本中央競馬会の広報誌『優駿』に連載を持つなど、多彩な活動を行っていました。

2004年12月4日、本田靖春は多臓器不全により生涯を閉じました。彼の遺体は冨士霊園に埋葬され、文学者としての功績が今も多くの人々に語り継がれています。著書は後に全5巻にまとめられ、多くの読者に影響を与えています。彼の作品は、単なるノンフィクションに留まらず、日本の社会における重要な問題を提起し続けました。

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