本郷信富

本郷信富（ほんごう のぶとみ）

生涯

本郷信富は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将であり、室町幕府の申次衆、そして江戸幕府初代の奏者番と見なされています。本郷氏は、鎌倉時代以来、若狭国に本拠を置く武士であり、足利尊氏の時代から代々足利将軍家に仕えていました。

当初、信富は足利義輝に仕え、義輝が三好長慶との対立により京都を追われた際には、自身の居城に迎え入れています。その後、足利義昭、織田信長にも仕えましたが、間もなく徳川家康の招きに応じてその麾下に入りました。慶長7年（1602年）には、山城国綴喜郡に500石の所領を安堵されています。

慶長8年（1603年）、徳川家康が征夷大将軍に任ぜられた際、信富は室町幕府以来の由緒ある家柄であることから、奏者番に任命され、伏見に屋敷を与えられました。この任命は、一般的に奏者番の初例とされていますが、実際にはこれ以前に津田秀政などが既に任じられていたとする資料も存在します。奏者番は、将軍と朝廷との間の連絡役や、幕府の儀式を執り行う重要な役職でした。

信富は慶長10年（1605年）に伏見で亡くなりました。嫡子の頼泰は父に先立って亡くなっており、家督は嫡孫の勝吉が継承しました。本郷家はその後も旗本として存続し、本郷泰固もこの末裔とされています。

本郷氏について

本郷氏は、鎌倉時代から続く若狭の武士であり、足利将軍家とのつながりが深い家柄でした。信富の活躍は、室町幕府から江戸幕府への移行期における武士の動向を考える上で、重要な事例の一つと言えるでしょう。また、奏者番という役職の成立過程を考察する上でも、欠かせない人物です。

参考文献

「寛政重修諸家譜」巻第471
『国史大辞典』第8巻（吉川弘文館、1987年）

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