札幌丘珠事件

札幌丘珠事件：開拓期の悲劇

札幌丘珠事件は、1878年（明治11年）1月に北海道の札幌村（現在の札幌市東区丘珠町）で発生した、エゾヒグマによる痛ましい熊害事件です。この事件では、冬眠から目覚めたヒグマが、食料を求めて人里に現れ、猟師や開拓民を襲い、3人が死亡、2人が重傷を負うという悲劇に見舞われました。

事件の背景

事件当時、札幌は開拓が始まったばかりで、市街地から少し離れると原生林が広がっていました。人口も少なく、周辺の農村を含めても8,000人に満たない程度でした。そのような環境下で、ヒグマは人里との境界線があいまいな場所で生息していました。

事件の経緯

第一の事件：猟師の死

1月11日、猟師の蛭子勝太郎が円山で冬眠中のヒグマを発見し、狩ろうとしましたが失敗。逆にヒグマの逆襲を受け、命を落としました。冬眠を妨げられたヒグマは飢えた状態で札幌の市街地を彷徨い、17日には警察が駆除隊を編成する事態となりました。

第二の事件：丘珠村の悲劇

1月17日深夜、ヒグマは丘珠村（現在の札幌市東区丘珠町）の開拓民、堺倉吉一家の小屋を襲いました。倉吉はヒグマに襲われ死亡、妻のリツは幼い息子を抱いて逃げようとしましたが、ヒグマに追いつかれ、息子を取り落としてしまいます。リツは重傷を負いながらも助けを求めましたが、その間に息子はヒグマに食い殺されてしまいました。また、倉吉の雇人も犠牲となりました。

翌18日、駆除隊によってヒグマは射殺されました。

被害者の詳細

当初、被害者は「死亡：堺倉吉、留吉」「重傷：リツ、雇人（女性）」とされていましたが、後の調査で、実際には「死亡：堺倉吉、留吉、雇人の酉蔵（男性）」「重傷：リツ、雇人の石澤定吉」であったことが判明しました。これにより、死者は4名、重傷者は2名となります。

解剖の顛末

射殺されたヒグマは札幌農学校（現在の北海道大学）に運ばれ、解剖されました。解剖の結果、ヒグマは全く脂肪がなく、冬眠に備えて十分に栄養を蓄えられなかったことが判明しました。飢えに苦しんだヒグマが、生きるために人里を襲ったと考えられています。

その後

ヒグマの剥製は開拓史博物館に保存され、明治天皇の天覧に供されました。剥製は現在も北海道大学植物園に保存されています。事件の跡地は札幌市立丘珠小学校の敷地となりました。夫と息子を失ったリツは、行政の扶助を受けながら、その後再婚しました。

事件の教訓

札幌丘珠事件は、開拓期における人とヒグマの共存の難しさを示す悲劇です。事件は、開拓の進展とともにヒグマの生息地が狭まり、人里との接触が増えたことが原因の一つと考えられています。現代においても、ヒグマをはじめとする野生動物との共存は重要な課題であり、事件の教訓を活かす必要があります。

事件現場付近には丘珠神社があり、事件を語り継ぐ場所となっています。

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