札幌村

札幌村の歴史：開拓から消滅、そしてその遺産

札幌村は、現在の札幌市中心部北東部、石狩川下流左岸に位置していた村です。江戸時代後期から明治時代にかけて、和人の入植によって開かれ、農村として発展を遂げました。1955年（昭和30年）に札幌市に合併されるまで、札幌の歴史に深く関わった村でした。

江戸時代の札幌村：開村と初期の困難

石狩川流域は、古くからアイヌの人々の豊かな漁場でした。江戸時代初期、和人の居住はほとんどありませんでしたが、近藤重蔵らによる北方政策構想の中で、石狩平野が蝦夷地の中心として注目されるようになりました。

幕末の安政年間には本龍寺が建立され、慶応2年（1866年）、幕府の農場開設に伴い、大友亀太郎が12人を率いて村を開きました。大友らは森林を開墾し、道路や用水路（大友堀、後の創成川）を整備して、入植者を迎え入れました。しかし、幕末維新の混乱により、当初約束されていた食糧支援が途絶え、村民の離散も発生しました。その後、北海道の行政区域が整備されると、札幌村は石狩国札幌郡に属することになりました。

明治時代の札幌村：発展と変遷

明治3年（1870年）、開拓使が札幌に本庁を置くと、多くの移民が流入しました。札幌村近辺にも新たな集落（札幌新村）が形成され、後に元の札幌村（札幌元村）と合併して、現在の札幌村となりました。開拓使は、農村の振興に力を入れ、馬の貸与や産物の買い上げなどを通して支援を行いました。札幌村は畑作中心の農業地帯として発展し、元村街道の開削によって交通の便も向上しました。

明治35年（1902年）の町村制施行により、札幌村、雁来村、苗穂村、丘珠村が合併して新たな札幌村が誕生しました。この札幌村は、札幌区（後の札幌市）に隣接しながらも、農業を基幹産業とする村として発展を続けました。明治14年（1881年）から栽培が始まった札幌黄（玉ねぎ）は、品質向上技術の進歩により、道外市場でも高い評価を獲得し、村の主要な産物となりました。また、牧草生産でも全国有数の生産量を誇りました。

札幌市への合併とその後

札幌市街地の拡大に伴い、札幌村の区域は段階的に札幌市に編入されていきました。昭和30年（1955年）3月1日、残りの区域も札幌市に合併され、札幌村は歴史の幕を閉じました。元村、雁来、苗穂、丘珠といった旧村の名称は、現在の札幌市東区の地名として受け継がれています。1977年4月には、大友亀太郎の役宅跡に札幌村郷土記念館が開設され、札幌村の歴史を伝える貴重な場所となっています。

札幌村の遺産

札幌村は、札幌市の発展に大きく貢献した歴史を持つ村でした。その歴史は、現在も地名や郷土記念館などに残っており、札幌の歴史を知る上で重要な要素となっています。札幌黄というブランド玉ねぎ、創成川など、札幌村は、現代の札幌の礎を築いたと言えるでしょう。

参考文献

札幌村史
札幌村郷土記念館
* その他関連文献

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