熊害

熊害（ゆうがい）とは

熊害とは、クマ科の哺乳類が人やその生活圏に及ぼす被害の総称です。これには、人や家畜への直接的な攻撃、農作物の食害、家屋への侵入、さらには交通機関との衝突などが含まれます。クマは高い知能を持ち、一度人間の生活圏に餌があると学習すると、繰り返し襲撃するようになることがあります。

クマと人類の関係

人類とクマの関係は非常に古く、ネアンデルタール人とホラアナグマとの関係は、20万年から7万5千年前まで遡ると言われています。クマは、その生息域や食性によって、人との遭遇の仕方や被害の様相も異なります。

クマの種類と攻撃性

アメリカグマ・ツキノワグマ

通常は大人しく注意深い性格ですが、ツキノワグマはユーラシア大陸のヒグマよりも人間に対して攻撃的であるという指摘があります。

ナマケグマ

インドやミャンマーでは、予測不能な気質からトラよりも恐れられることがあります。主に夜間に人間と遭遇した際に驚き、身を守ろうとして攻撃することが多いです。

ヒグマ

近年、ヒグマによる人への被害は増加傾向にあります。2000年から2015年の間に世界中で664件の獣害が発生し、そのうち14.3％が死亡事故につながっています。

ホッキョクグマ

地球温暖化の影響で、生息域の氷が減少し、陸上での活動時間が増えています。これにより、人間との遭遇の機会が増え、事故も発生しています。

マレーグマ

各国における被害状況

アジア

インド

インドには、ツキノワグマ、ヒマラヤヒグマ、マレーグマ、ナマケグマが生息しています。マディヤ・プラデーシュ州では、ナマケグマによる死傷者が多数発生しており、食糧を巡る争いや人口密度が原因と考えられています。

インドネシア

インドネシアでは、森林破壊によりマレーグマの生息地が減少し、個体数が減少しています。しかし、一方で死傷者が出る事故も発生しており、人的被害が出ています。

日本

日本では、北海道にエゾヒグマ、本州と四国にニホンツキノワグマが生息しています。クマは、シカ、イノシシに次いで獣害を引き起こす動物として知られており、農業、林業、畜産業に経済的な被害を与えています。特にツキノワグマによるクマハギは、木材の価値を低下させる要因となっています。

人的被害も発生しており、山菜採りやキノコ狩りの際に事故に遭うケースが多いです。2004年と2006年には、大量出没により145名もの負傷者が出ています。過去には、三毛別羆事件のような甚大な被害も発生しています。

東京都の奥多摩地域では、造林木や家畜への食害、人身事故が発生しています。過疎化と高齢化が進む奥多摩では、クマ対策が困難になっている現状があります。富山県では、クマによる人への危害を減らすため、クリやカキの実を撤去する作業を行った結果、負傷者が減少しました。

北アメリカ・ヨーロッパ

ノルウェー

スヴァールバル諸島では、ホッキョクグマによる死亡事故が発生しています。

フランス

ピレネー山脈では、クマの導入以来、家畜への被害が報告されています。特にヒツジが犠牲になるケースが多く、畜産農家は経済的な打撃を受けています。

熊害の対策

クマによる被害を防ぐためには、クマの生態を理解し、適切な対策を講じることが重要です。クマの出没しやすい場所や時期を把握し、山に入る際はクマ鈴やラジオなどを携帯し、単独行動を避けることが大切です。また、食べ残しや生ゴミを放置しない、クマの餌となるものを除去するといった対策も有効です。

かつて北海道で行われていた春グマ駆除制度は、個体数減少を招いたため廃止されました。現在は、必要最小限の駆除にとどめる方針がとられています。

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