札幌市交通局3000形電車

札幌市交通局3000形電車は、札幌市営地下鉄の南北線で活躍した通勤形車両です。1978年に南北線の北24条駅から麻生駅までの延伸開業に合わせて導入されました。

当初、本形式は1971年の南北線開業時から使用されていた2000形を8両編成化する際に増備される中間車の一部として、2000形の8次車として開発が進められていました。しかし、設計段階で車体構造や制御方式、デザインなどに大きな変更が加えられたため、最終的には2000形とは区別され、新たな形式である「3000形」として登場しました。

車体と構造

3000形の設計は、同時期に東西線向けに導入された6000形を基礎としています。これにより、2000形の特徴的な2車体連接・7軸構造から、より一般的なボギー台車を採用した2車体連接構造へと変更されました。駆動方式も、これまでの特殊な方式から平行カルダン駆動に変更されています。

札幌市営地下鉄はゴムタイヤ方式を採用しており、特に南北線のように曲線が多い路線では、左右の車輪の回転差を吸収する仕組みが必要です。他のゴムタイヤ式地下鉄（パリメトロ、メキシコシティ地下鉄など）が差動装置を用いるのに対し、札幌方式では独自の工夫が凝らされています。3000形では、台車に装備された2基の主電動機を左右の車輪それぞれに専用で使用することで、差動装置なしで回転差に対応しました。各電動機からの動力は平歯車を介して前後の車輪に伝達されます。

車体の長さは2000形と同じ1車体あたり13.5mとされました。客用扉は両開き式で片側に2箇所設けられています。編成は南北線の輸送力増強に対応するため、8両編成で組成されました。

機器と設備

主回路の制御方式には、6000形と同様に電機子チョッパ制御が採用され、スムーズな加速・減速を実現しました。空気圧縮機については、大部分の編成（301～304編成）がC2000M形を装備していましたが、最終増備編成である305編成ではC2000L形が採用されるなど、一部で差異が見られました。これらの機器は全て三菱電機製です。

車内空間においては、壁面の化粧板に東西線用6000形に見られた市内名所のイラストはなく、暖色系の地に薔薇の模様が描かれたものが採用されました。車両間の通り抜け通路は、2000形の形状とは異なり、6000形に準じた六角形となっています。吊り革は従来通りの三角形で、6000形と同じくカバーは付けられていませんでした。ただし、両先頭車の運転席後部のスペースが2000形よりも短縮されたため、座席配置が変更され、定員が若干減少しています。

乗降促進用のブザーも装備されており、第1編成は6000形に近い音色でしたが、第2編成以降は異なる音色が採用され、その後の増備車にも踏襲されました。一方、バリアフリーの観点から近年一般的となっている、視覚障害者向けの個別ドアチャイムは、廃車されるまで設置されませんでした。

運行と改造

1995年に南北線に新型車両5000形が導入されると、扉の数と位置が3000形（片側2扉）と5000形（片側3扉）で異なることから、駅ホームでは乗車位置が色分けされるようになりました。3000形は緑色、5000形は青色とされ、列車接近時には「緑色の乗車位置でお待ちください」といった音声およびLEDによる案内が行われました。この案内と色分けは、後に3000形が引退しホームドア設置が進められた際に廃止されています。

製造は全車両が川崎重工業によって行われました。総製造数は南北線の歴代車両形式の中で最も少ない形式でした。なお、本形式に続いて札幌市電に3300形が登場したため、3000形の一部の車両番号（3301～3305）は市電の車両番号と重複しています。

運用期間中にはいくつかの改造や改良が実施されました。当初、第1編成の正面は窓周り以外が側面帯と同じ濃緑色に塗り分けられていましたが、後に量産車と同様の淡緑色一色に変更され、側面の帯も塗り直されました。2003年には、02編成にLED式の行先表示器が設置され、02編成から05編成にかけては車内放送の自動化も行われています。また、全編成の連結部に転落防止用の外幌が取り付けられました。2007年7月には、すべての客用ドアに号車とドア位置を示す点字プレートが貼付されました。

引退

3000形は老朽化が進んだこと、そして将来的な可動式ホーム柵の設置やワンマン運転導入への準備のため、2012年3月25日をもって全ての編成が営業運転を終了し、南北線から引退しました。これにより、南北線で使用される営業車両は5000形に統一されました。

各編成の廃車時期は以下の通りです。
第1編成：2005年3月14日（2003年4月1日から使用休止後、2005年5月に解体）
第2編成：2011年
第3編成：2010年
第4編成：2011年
* 第5編成：2012年3月（最後まで営業運転に使用された編成）

もう一度検索