朱引

朱引（しゅびき）とは

朱引とは、江戸幕府が定めた江戸の範囲を示すものです。地図上では朱色の線で示され、この線で囲まれた区域が「大江戸」とされました。1818年（文政元年）に初めて公式に定められ、その呼称は明治時代まで用いられました。

概要

江戸の市域は、1590年（天正18年）の江戸城築城以来、拡大を続けていましたが、19世紀初頭にはその範囲が不明確になっていました。そこで、幕府目付の牧野助左衛門が市域の確定を求める伺いを提出し、老中の阿部正精が幕府の公式見解として朱引を定めました。この決定に基づいて作成された「旧江戸朱引内図」には、江戸城を中心とする朱色の線で囲まれた区域が示されています。これが歴史上初めて正式に示された江戸市域の範囲であり、「朱引内」、「御府内」などとも呼ばれました。また、朱引の外側は「朱引外」と区別されました。

範囲

朱引の範囲は「四里四方」と言われ、具体的には以下の地域を含みます。

東: 平井、亀戸周辺
西: 代々木、角筈周辺
南: 品川周辺
北: 千住、板橋周辺

現在の行政区画では、以下の地域に相当します。

ほぼ全域: 千代田区、中央区、港区、文京区、台東区
境界域:
新宿区（角筈村、戸塚村まで）
墨田区（木下、墨田村まで）
江東区（亀戸まで）
品川区（南品川宿まで）
渋谷区（代々木村まで）
北区（滝野川村まで）
豊島区、板橋区（板橋村まで）
荒川区（千住まで）

墨引

朱引図には、朱線と同時に黒線が引かれていました。これは墨引と呼ばれ、町奉行所支配の範囲を示していました。墨引は、目黒付近で朱引の外側に突出する例外を除いて、朱引よりも内側の小さな環状域です。

明治期の朱引

1869年（明治2年）、東京府は新たな朱引を定めました。この明治期の朱引は、皇居を中心として、朱引の内側を「市街地」、外側を「郷村地」と定めるものでした。同年に朱引内に50区の区画が制定され、その後、1871年には範囲が縮小され44区に再編成されました。この制度は、1878年の郡区町村編制法の施行まで続きました。

まとめ

朱引は、江戸の範囲を明確にするために定められた重要な基準であり、その範囲は現在の東京都心部とその周辺地域に広がっていました。この朱引の存在は、江戸の都市計画や行政区分を理解する上で欠かせない要素です。また、明治時代にも朱引が使用されたことは、その制度が長く日本の都市計画に影響を与えたことを示しています。

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