朴烈

朴烈：波乱の生涯を辿る朝鮮の活動家

朴烈（パク・ヨル、1902年3月12日-1974年1月17日）は、20世紀前半、朝鮮半島と日本で活動した社会運動家であり、その生涯は劇的な転換と謎に満ちています。本名は朴準植（パク・チュンシク）。慶尚北道で生まれた朴烈は、三・一運動後の1919年、日本へ渡りました。

日本での活動と朴烈事件

日本において、朴烈は朝鮮併合への怒りを背景に、無政府主義運動に身を投じます。黒濤会や不逞社といった組織を結成し、活発な活動を行い、雑誌『太い鮮人』（のちに改題）を発刊しました。この間、日本人の無政府主義者、金子文子と深く関わりました。

1923年の関東大震災後、朴烈と金子文子は治安警察法違反容疑で逮捕されます（朴烈事件）。当初は朝鮮独立運動への関与が疑われましたが、天皇暗殺未遂を自供したことで大逆罪に問われ、死刑判決を受けます。しかし、天皇の恩赦により無期懲役に減刑され、これは朴烈自身の激怒を招きました。

獄中と転向

長期にわたる獄中生活の中で、朴烈は獄中手記を発表するなど、無政府主義運動との繋がりを維持していました。しかし、1937年には「日本のために生き、日本のために死ぬ」と転向を表明し、恭順上申書を提出します。これは新聞報道され、内鮮融和のプロパガンダに利用されました。千葉刑務所では二・二六事件の決起将校、池田俊彦と出会い、池田は朴烈の意外な一面を回顧録で記しています。秋田刑務所を出獄する直前にも、朝日新聞の取材に応じ、日本への忠誠を表明しました。

戦後と帰国、そして最期

終戦後の朴烈は、無政府主義から反共主義へと転向します。在日朝鮮人の組織結成を目指し、新朝鮮建設同盟を結成、委員長に就任。その後、在日本朝鮮居留民団初代団長にも就任しますが、1949年の選挙で再選ならず、韓国へ帰国します。

帰国後、李承晩大統領から国務委員への任命も検討されましたが、朝鮮戦争勃発により北朝鮮軍に捕まり、北朝鮮へ連行されます。北朝鮮では、思想転向を表明し、南北平和統一委員会の副委員長などを務めました。1974年1月17日、北朝鮮で死去しました。その死の真相については、スパイ容疑による処刑説など、様々な憶測が残されています。

朴烈の思想と行動

朴烈の生涯は、一貫した思想を持つ人物像とは言い難く、激しい思想的転向を繰り返しました。当初の無政府主義、その後の日本への忠誠、そして共産主義への転向など、その行動原理はいまだに議論の的となっています。しかし、朝鮮独立運動への関与、そして在日朝鮮人社会での活動など、歴史上重要な役割を果たしたことは間違いありません。彼の生涯は、激動の時代の流れの中で、個人がどのように揺れ動き、変容していくのかを象徴的に示していると言えるでしょう。

参考文献

海軍省海軍軍事普及部（編）『国立国会図書館デジタルコレクション 支那事変報国美談』海軍省海軍軍事普及部、1937年。
朴烈関連の書籍、論文等

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