朴 賛希(パク・チャニ)
朴 賛希は、
1957年3月23日に
大韓民国の釜山市で生まれた、かつて世界のリングで活躍した
プロボクサーです。そのキャリアを通じて、世界
ボクシング評議会(WBC)の
フライ級世界王座に君臨し、また権威ある
リングマガジン誌の世界
フライ級王座も獲得しました。
アマチュア時代とプロ転向
プロのキャリアをスタートさせる前、朴はアマチュア
ボクシングでその実力を磨きました。特に注目すべきは、
1976年にカナダのモントリオールで開催された夏季オリンピックに、韓国代表としてライト
フライ級で出場した経験です。オリンピックという大舞台で、彼は準々決勝まで勝ち進み、国際的なレベルでの自身の可能性を示しました。オリンピックでの経験を経て、朴は
1977年7月8日に
プロボクサーとしての第一歩を踏み出しました。
世界王座獲得とその防衛ロード
プロ転向後、朴は着実にキャリアを積み重ね、わずか11戦目となる
1979年3月18日、メキシコの技巧派王者
ミゲル・カントが保持するWBC世界
フライ級タイトルに挑戦する機会を得ました。このタイトルマッチで、朴は時の世界王者を打ち破る見事な勝利を収め、自身初となる世界王座を獲得しました。
世界チャンピオンとなった朴には、次々と強敵が挑んできました。最初の防衛戦は、日本の五十嵐力選手を相手に行われました。
1979年5月20日のこの試合は、15ラウンドをフルに戦い抜く判定決着となり、朴が勝利を収め、王座防衛に成功しました。
続く2度目の防衛戦では、王座を奪った
ミゲル・カントとの再戦が組まれました。
1979年9月9日に行われたこの試合も、前戦同様に激しい戦いとなり、結果は15回判定ドロー。朴は辛うじて世界王座を守り切りました。
3度目の防衛戦となった
1979年12月16日の
グティ・エスパダス・ジュニアとの対戦は、朴のキャリアの中でも特に壮絶な一戦として記憶されています。試合開始のゴングが鳴ると同時に、両者一歩も引かぬ激しい打ち合いとなり、初回からダウンの応酬となる白熱した展開となりました。この激闘を制したのは朴であり、わずか2ラウンドでエスパダスにTKO勝利を収め、見事に3度目の防衛を果たしました。
その後も朴は防衛を重ね、アルベルト・モラレスとの5度目の防衛戦では、
1980年4月18日に15回判定勝ちを収めるなど、WBC世界
フライ級王者として安定した強さを見せつけました。
王座陥落と大熊正二との激闘
しかし、栄光の防衛ロードは長くは続きませんでした。6度目の防衛戦で、朴は日本の
大熊正二選手と対戦しました。
1980年5月18日に行われたこの試合で、朴は9回にKO負けを喫し、長らく保持した世界王座を失うこととなりました。この敗北は、朴にとってプロキャリアにおける初めての黒星でもありました。
世界王座からの陥落は、朴に新たな挑戦への火をつけました。彼はすぐさま王座奪回を目指し、
大熊正二との再戦を申し込みました。
1980年10月18日に行われたこの試合は、前回とは打って変わり、最終ラウンドまで勝敗の行方が分からない拮抗した展開となりました。15回の熱戦の結果は判定に委ねられましたが、惜しくも1-2の僅差で朴は敗れ、王座返り咲きはなりませんでした。
前回の判定結果に対して異議が出されたこともあり、朴はすぐに
大熊正二との3度目の対戦の機会を得ました。
1981年2月3日に行われたこのダイレクトリマッチも、再び判定にもつれ込む展開となりましたが、結果は0-2で朴に軍配は上がらず、大熊に対し世界戦で3連敗を喫するという厳しい現実を突きつけられました。
キャリアの終焉
大熊正二との激闘を経て、朴の
ボクシングキャリアは最終章へと向かいます。彼はその後もリングに上がり続けましたが、かつてのような輝きを取り戻すことは難しくなっていきました。そして、1982年12月12日の試合を最後に、朴 賛希は
プロボクサーとしてのキャリアに終止符を打ち、現役を引退しました。
朴 賛希は、オリンピック出場経験を持ち、プロ転向後もわずか11戦目で世界王座を獲得するなど、韓国
ボクシング界において一時代を築いた選手です。特にWBC世界
フライ級王者として、
ミゲル・カントや
グティ・エスパダスといった強豪を相手に繰り広げた防衛戦は、多くの
ボクシングファンの記憶に残るでしょう。また、日本の
大熊正二選手との3度にわたる激闘は、国境を越えたライバル関係として語り継がれています。
獲得した主なタイトル
WBC世界
フライ級王座(5度防衛)
リングマガジン世界
フライ級王座