杉原志啓

杉原志啓（すぎはら ゆきひろ、1951年 - ）は、日本の音楽評論家であり、同時に日本近代思想史研究者としても活躍しています。山形県酒田市出身の杉原氏は、学習院大学で坂本多加雄に師事し、その薫陶を受けました。坂本氏の没後には、その選集の編集・監修にも尽力し、師の業績を後世に伝える役割を担いました。

1993年には、博士論文「蘇峰と「近世日本国民史」 - 大記者の「修史事業」」で学習院大学から博士（政治学）の学位を取得。この研究は、徳富蘇峰の思想と活動を深く掘り下げたものであり、杉原氏の思想史研究における重要な業績の一つです。

教育者としては、学習院女子大学、フェリス女学院大学、東京藝術大学、そして出身地である東北公益文科大学などで非常勤講師を歴任し、次世代の育成にも貢献しました。

著作活動

杉原氏の著作活動は、思想史と音楽評論の二つの分野に大きく分かれます。

思想史関連の著作

『蘇峰と「近世日本国民史」――大記者の「修史事業」』（都市出版、1995年）：博士論文を基にした著作で、徳富蘇峰の思想と「近世日本国民史」の編纂事業を詳細に分析しています。
『おもしろい歴史物語を読もう』（NTT出版、2008年）：歴史を身近に感じられるように、物語形式で歴史を紹介しています。
『波瀾万丈の明治小説』（論創社、2018年）：明治時代の小説を題材に、歴史と文学の関係を考察しています。

音楽関連の著作

『R&R（ロックンロール）クラシックス』（アーツアンドクラフツ、2000年）：ロックンロールの歴史と名盤を紹介する評論集です。
『音楽幸福論』（学習研究社、2004年）：音楽がもたらす幸福について、多角的に考察しています。
『メガヒッツ!――ロック/ポップ名盤物語』（まどか出版、2004年）：ロックやポップスの名盤を紹介する評論集です。
『音楽の記憶――ポップ・ミュージックと本の青春』（アーツアンドクラフツ、2007年）：自身の音楽体験と読書体験を結びつけ、青春時代を回顧しています。

翻訳・編著

杉原氏は、翻訳や編著活動にも積極的に取り組んでいます。

ビン・シン著『評伝 徳富蘇峰――近代日本の光と影』（岩波書店、1994年）：徳富蘇峰の評伝を翻訳し、その生涯と業績を詳細に紹介しています。
編・解説『歴史を語る作法　坂本多加雄 対談・書評集』（都市出版、2004年）：師である坂本多加雄氏の対談や書評を集めたものです。
編・解題『坂本多加雄選集』（藤原書店、全2巻、2005年）：坂本多加雄氏の著作を選集としてまとめました。
富岡幸一郎共編『稀代のジャーナリスト 徳富蘇峰』（藤原書店、2013年）：徳富蘇峰に関する研究論文や資料をまとめたものです。
徳富蘇峰著『将来の日本・吉田松陰』（中央公論新社、2015年）：徳富蘇峰の著作を現代語訳し、解説を加えています。

共著

ポール・M・サモン編『エルヴィスとは誰か――20の"キング"伝説』（音楽之友社、1996年）：エルヴィス・プレスリーに関する評論集を翻訳しました。
宇田和弘と共著『200CDニュー・スタンダード―ロック&ポップスで聴くスタンダード』（学習研究社、2005年）：ロックやポップスの名曲を紹介するガイドブックです。
* 西村幸祐と共著『イチローと村上春樹は、いつビートルズを聴いたのか――サブカルチャーから見た戦後日本』（PHP研究所、2009年）：サブカルチャーの視点から、戦後日本の音楽や文学を考察した著作です。

杉原志啓氏は、音楽評論家としてだけでなく、思想史研究者としても幅広い分野で活躍し、その著作は多くの読者に影響を与えています。彼の活動は、音楽と歴史の両分野にわたる深い知識と洞察力に基づいています。

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