杉本尚文

徳島県阿南市に1971年5月9日生まれ。プロ野球の舞台で捕手として活躍したのち、指導者を経て、現在はオリックス・バファローズのブルペン捕手としてチームを支えている。選手、コーチ、ブルペン捕手と、そのキャリアは一貫してオリックス球団と共に歩んでいる。

来歴・人物

野球への興味は、小学校1年生の時に5歳上の兄から受けた影響が始まりだった。阿南市立宝田小学校では、後にプロ入りする水野雄仁が先輩にあたる。小学校では投手と捕手を兼任していたが、中学校で軟式野球部に入部してからは捕手に専念。全国大会出場を経験するなど、その実力が注目され、いくつかの高校から誘いを受けた。中でも、幼少期から憧れを抱いていた池田高校への進学を決意。公立高校であり、学業面での基準も厳しかったため、担任教師から厳しい評価を受けるも、懸命な勉強の末、念願の入学を果たした。

池田高校では、2年生時の1988年夏に「1番・捕手」として全国高等学校野球選手権大会に出場。初戦で浜松商業高と対戦し、延長14回の熱戦の末に惜敗した。3年生の夏は、県大会3回戦で敗退し、甲子園への連続出場は叶わなかった。高校卒業後、プロのスカウトからも注目され、複数の球団が指名候補として挙げていたが、1989年のドラフト会議での指名はなかった。しかし、同年オフにドラフト外でオリックス・ブレーブスへの入団が決定した。

プロの世界に足を踏み入れた杉本は、高校時代に培った強肩には自信があったものの、1年目の1990年にチームの正捕手であった中嶋聡の桁外れの送球を目にし、プロの世界とのレベルの隔絶を痛感。「自分では太刀打ちできない」と感じたという。同年終盤には一軍での出場機会を得てプロでの第一歩を記し、手応えも掴んだが、当時のオリックス捕手陣は藤田浩雅、中嶋聡、高田誠、三輪隆、日高剛といった錚々たる顔ぶれが揃っており、極めて層が厚かった。チーム自体も優勝争いを繰り広げる強い時期であり、レギュラー捕手の座を獲得するには至らなかった。

厳しい競争の中でも、杉本はプロの世界で生き抜くために様々な打開策を模索した。バットを短く持つスタイルで右方向への打撃を意識したり、バント練習に多くの時間を割くなど、自身のプレースタイルに特徴を出そうと努めた。1995年には、チームは一軍、二軍ともに優勝。二軍の優勝に貢献した杉本は、一軍が優勝を決めた直後、プロ入り後初の先発出場を果たし、そこでプロ初安打をマークした。その後も二軍では結果を残し続けたが、一軍の壁を打ち破ることは難しく、プロ10年目の1999年シーズン途中からは、二軍の試合出場機会がなくなり、ベンチ入りをしない一軍の帯同捕手という役割に就いた。試合中は寮の練習場で一人で打撃練習に打ち込む日々を送っていたが、シーズン終盤、当時の仰木彬監督の計らいにより一軍登録され、指名打者として2試合に出場。そこで2安打を放つ活躍を見せ、翌年の契約を勝ち取った。しかし、2000年シーズンをもって現役生活に幕を下ろした。

現役引退後も、杉本はオリックス球団（ブルーウェーブ、そしてバファローズへと球団名が変わった後も）に留まり、チームへの貢献を続けた。2001年からはブルペン捕手としてチームを支え、2002年から2004年には一軍バッテリーコーチ補佐、2005年から2006年には二軍ブルペン兼育成コーチを務めた。2007年からは再びブルペン捕手となり、現在に至る。

現在のブルペン捕手としての職務は、同じブルペン捕手の別府修作コーチと共に担っている。ホームでのナイトゲームがある日は、昼頃には球場入りし、約1時間をかけて自身の身体の準備を行う。午後2時過ぎからは、その日の登板がないローテーション投手の投球練習を約50球ほど受け、その後は練習の補助などを行う。試合開始間際の午後5時半頃からは、先発投手の試合前の投球練習を捕球し、途中から先発マスクを被る捕手へ引き継ぐ。試合開始後はブルペンで待機し、試合展開を見守りながらリリーフ投手陣の投球練習に付き添う。試合終了までブルペンに待機し、投手から質問があれば答えたり、投球の感想を伝えることを心がけている。気づいた点については、選手本人ではなくバッテリーコーチへ伝えることも少なくないという。特に毎日登板の可能性がある中継ぎ投手は、一度コンディションを崩すと回復に時間を要する場合があるため、小さな兆候も見逃さないよう注意を払う必要性を感じている。投手の状態を把握するため、杉本はキャンプの時から、各投手の印象や、最も良い時の投球イメージを記憶に留めるため、あるいは記録として残すため、細かくメモを取る習慣がある。

詳細情報

背番号

49 (1990年 - 2000年)
103 (2001年)
93 (2002年 - 2004年)
73 (2005年 - 2006年)
109 (2007年 - 現在)

記録

初出場・初打席：1990年8月26日対近鉄バファローズ22回戦（西宮球場）、藤田浩雅の代打・村上信一に代わって捕手として出場
* 初安打：1995年9月21日対西武ライオンズ25回戦（グリーンスタジアム神戸）、鹿取義隆から

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