杉村楚人冠

杉村楚人冠（すぎむらそじんかん）

杉村楚人冠（1872年7月25日 - 1945年10月3日）は、日本の新聞記者、随筆家、俳人であり、多岐にわたる活動を通じて新聞業界に多大な影響を与えました。本名は廣太郎で、その他にも「縦横」や「涙骨」などの多くの筆名を持ちます。彼は朝日新聞社で記事審査部長や取締役、監査役を歴任しました。

生い立ちと教育

明治5年、和歌山県和歌山市に生まれた楚人冠は、父を3歳の時に失い、母親に育てられました。小学校を修了後、11歳で和歌山の自修学校に入学し、英・漢・数学の課程に取り組みます。この学校では、英語を学ぶ教師が慶應義塾出身であったため、彼は当時の独特な英語発音に触れることとなりました。12歳の時、彼は河島敬蔵から正しい英語の発音を学び、これが後の彼の英語の素養に大きな影響を与えました。

その後、旧制和歌山中学校に進学しますが、校長との対立を理由に退学し、英語教育を続けるために和歌山英語学校へ通い、1887年には東京へ上京。英吉利法律学校に入学し、その後アメリカ人教師が主催する国民英学会の国語法律科を卒業しました。その後、19歳で『和歌山新報』の主筆に就任し、再度上京して自由神学校に入学し、英語教師として働くことになります。

新聞記者としての活躍

1903年、朝日新聞社に入社した楚人冠は、まず外電の翻訳を担当しました。特に1904年にはレフ・トルストイの「日露戦争論」を全訳して掲載し、その名を広めました。その後、特派員として海外に赴き、彼の見聞を活かして「大英游記」をシリーズ連載し、軽快な文章で読者の支持を得ました。

1911年には「索引部」を創設し、続いて1924年には「記事審査部」を設けるなど、日本の新聞業界において様々な改革を行いました。彼は、新聞の効率的な運営を目指し、資料の整理や保管の方法を進化させ、縮刷版や記事データベースの発展に寄与しました。さらに、著書『最近新聞紙学』や『新聞の話』により、日本の新聞学の基礎を築きました。

晩年と影響

関東大震災を機に、千葉県我孫子町に移り住み、隠棲しながら多くの作品を執筆しました。彼は名随筆集『湖畔吟』をはじめ、句の研究やゴルフ倶楽部の創立など、地域の文化活動にも尽力しました。また、彼の随筆は多くの後進作家に影響を与えました。

1945年に逝去し、彼の寄与は今なお評価され続けています。彼の指導を受けた弟子たちによって、邸宅跡地に句碑が建立されるなど、その影響は形となって残っています。今日でも、文学界や新聞業界における彼の業績は、重要な位置を占めています。

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