李元軌

李元軌（り げんき）

李元軌は、唐の高祖・李淵の十四男として生まれ、その多才さで父帝に愛されました。母は張美人です。彼の生涯は、唐王朝の政治と社会に深く関わり、その足跡は歴史に刻まれています。

生涯

武徳6年（623年）に蜀王に封じられ、その後、呉王に徙封されました。貞観7年（633年）には寿州刺史に任じられ、六百戸の実封を受けました。高祖・李淵が崩御した際には、官職を辞して喪に服し、その哀悼の意を示すために食を断つほどの礼を尽くしました。

貞観10年（636年）に霍王に改封され、絳州刺史に任じられます。その後、徐州刺史に転じますが、刺史としての職務は長史や司馬に任せ、自らは邸に引きこもって読書にふける日々を送りました。しかし、その態度は慎み深く、人々に惜しみなく物を与えることを心がけ、処士の劉玄平と庶民のように親しく交際しました。

貞観23年（649年）には、実封は千戸まで加増され、定州刺史に任じられました。突厥が定州を攻撃した際、李元軌は城門を開け、旗や幟を掲げさせました。敵はこれを疑い、入城をためらい、夜間に退却しました。また、定州の李嘉運が敵と内通していたことが発覚した際には、高宗の処刑命令に対し、李嘉運のみを処刑し、他の人々に罪を及ぼさないようにしました。この措置に対し、高宗は李元軌の明察を称賛し、定州を守った功績を認めました。

朝廷に出仕する際には、政治の得失について上疏することが多く、高宗はその意見を尊重し、重要な事柄について相談しました。高宗が崩御した際には、侍中の劉斉賢とともに陵墓の事務を執り行いました。李元軌は故事に通じていたため、劉斉賢に感嘆させたといいます。また、封国の租税徴収を国令に任せていましたが、国令が諸国の交易に税をかけることを請願した際には、これを退け、不正な利益を追求することを戒めました。

垂拱元年（685年）には司徒の位を加えられ、襄州刺史、さらに青州刺史として地方に赴任しました。しかし、垂拱4年（688年）に越王・李貞の謀反に連座し、黔州に流罪となり、護送中に亡くなりました。

人物

李元軌は、学問を好み、人々に寛大で、政治にも深い関心を持つ人物でした。高宗からの信頼も厚く、その意見は尊重されました。しかし、晩年は不遇であり、流罪の身で生涯を終えることとなりました。

家族

李元軌は、鄭国公・魏徴の娘を妻に迎えました。多くの子に恵まれ、長男の李緒は江都郡王に封じられましたが、後に罪を犯して処刑されました。次男の李純は安定郡王、三男の李綽は胙国公、四男の李綱は南陽公、五男の李絢は南昌郡公、末子の李繹は山陽郡公に封じられました。

伝記資料

『旧唐書』巻64 列伝第14「霍王元軌伝」
『新唐書』巻79 列伝第4「霍王元軌伝」

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