李卓吾

李 卓吾（り たくご）

李卓吾（1527年 - 1602年）は、中国明代の著名な思想家であり評論家で、特に陽明学左派の泰州学派に属していました。泉州府晋江県に生まれた卓吾は、本名を林載贄とし、後に姓を李に変えました。彼は1566年に即位した隆慶帝に配慮して「載」の字を避け、李贄と名乗ったことでも知られています。また、母を早くに亡くし、父から学問を営む影響を受けながら成長しました。そのため社会的な動きや家族の影響が彼の思想に大きな意味を持つこととなります。

生涯

李卓吾は若い頃から地方官を歴任し、40代には北京や南京で官界に身を置いていましたが、54歳で官職を退き、芝仏院での生活を始めます。この時期に、彼の著作のほとんどが生まれました。彼は経済的に友人に頼りながら執筆活動に専念しましたが、50歳以前の生涯については文献が少なく、次第に編集や著作活動においてその思想が際立つことになります。

李卓吾の思想は受け継がれた教育や官僚経験を通じて形成されました。特に彼は陽明学への傾倒を通じて、王陽明の弟子たちとも交流を持ち、自らの哲学を深めていきます。539人の思想家と共に哲学を探求し、さらに西洋のイエズス会に属するマテオ・リッチとも面識を持ち、相互理解が深まりました。彼はリッチの人間性や著作に高い評価を示し、一方でキリスト教に対しては相対主義者としての立場を堅持していました。

官職引退後、彼の著作『焚書』は朱子学に対する厳しい批判を含み、結果的に彼を迫害の対象にしました。稿本には彼の友人との文通が収められ、朱子学者たちに強い圧力をもたらしました。彼は62歳で剃髪し、生活様式や思想に対する批判にさらされ、793年には逮捕され、最終的に獄中で自ら命を絶ちました。その後、彼の著作物は政府によって焼却され、数世代にわたって禁書とされ続けました。

思想と宗教的アプローチ

李卓吾の思想は「童心説」に象徴されます。彼は人間が持つ純真無垢な心、すなわち「童心」が成長と共に外部からの影響によって曇っていく過程を唱え、朱子学の観点に真っ向から異を唱えました。この「童心」は社会や文明の影響を受けないまっさらなものであり、彼は読書を通じた知識の獲得を否定し、それが「童心」を失わせると述べています。彼の見解は、士大夫や支配者階級が持つ偽善的な行動に対する焰口は強く、時代の文化的価値との矛盾を炙り出しました。

さらに、李卓吾は歴史的な偉人や文学作品に対しても独自の評価を行い、文化的な基準を刷新しました。彼は権威ある評価にとらわれず、士大夫的価値観とは異なる視点から作品を称賛しました。このようなリベラルな思想は当時の社会において非常に特異であり、彼の文学への洞察を通じて詩文と本流文学の価値を高める結果となりました。

後世への影響

李卓吾の思想は批判を浴びることもありましたが、彼の「童心論」は後の文学や思想に大きな影響を与えました。明末における公安派の性霊説にも彼の思想が反映され、自然な心の表現を強調しました。日本や他の地域においても醸成される思想の中で、李卓吾の後継者は次々に登場しましたが、彼のように直面する価値観に挑戦する者は現れませんでした。

日本の江戸時代にも李卓吾の名は知られており、吉田松陰など多くの思想家が彼の著作に影響を受けました。本居宣長の思想もまた、李卓吾の「童心」に似た主張を展開しています。李卓吾の理念は、今日でも中国や日本において重要な思想的遺産として受け継がれています。

主な著作

• - 『焚書』
• - 『続焚書』
• - 『蔵書』
• - 『続蔵書』
• - 『李氏文集』
• - 『卓吾大徳』
• - 『古道録』
• - 『孫子参同十三篇』

李卓吾の思想と作品は、彼の時代を超え、今日の文化的な文脈においても重要な存在として位置付けられています。

もう一度検索