李善 (唐)

李善について

李善（り ぜん、? - 690年）は、中国の唐代に生きた学者であり、彼の名は特に『文選』の注釈によって広く知られています。浮き彫りにされる彼の伝記には、鄂州江夏県鐘台山（現在の湖北省咸寧市咸安区大幕郷）出身であることが示されています。彼の祖父は隋の連州司馬の李贖であり、父は唐の括蒼県令を務めた李元哲。さらに、彼の弟には李昉がいて、子には文化人や書家として名を馳せた李邕がいることが知られています。

生涯と業績

李善については、入手可能な情報をもとにさまざまな議論が展開されています。『旧唐書』の儒学伝や文苑伝、さらには『新唐書』の文芸伝においても彼に関する記載がみられますが、これらの文献には多くの矛盾が見られ、正確な経歴の把握が難しい状況です。富永一登の整理によれば、李善は615年から620年頃に生まれ、江夏で育ったと考えられています。634年頃には曹憲から『文選』を学び、その後、顕慶年間には崇賢館の直学士に任じられました。

658年には『文選』注解を上表し、その後、李賢（章懐太子）に仕えることとなり、潞王府記室の参軍にも選ばれました。さらに経歴においては、秘書郎を経て沛王侍読を兼任し、後には経城県の県令にも任じられました。賀蘭敏之（武則天の親戚）からの推薦により弘文館の直学士としても活動しましたが、671年に賀蘭敏之が失脚すると連座し姚州へ流されることとなりました。流罪から許された後は、官に就くことなく、汴州と鄭州の間で『文選』の教えに専念しました。また、675年には子供の李邕が誕生しています。彼は689年12月18日から690年10月15日までの間に亡くなりました。

評価と批判

『新唐書』では李善の才能について厳しく評価されており、彼は古今の書物に通じていたものの文才が不足しているとの意見が述べられています。特に「書簏」というあだ名が付けられ、これは本を読むだけで理解を深めないという意味を挿し示しています。この記述によれば、彼が『文選』の注釈を作成した際には、内容の説明に留まり文の意味を伝えられなかったため、その後、子の李邕が文義を補完する形となったとされています。しかし、後世の研究者たちはこの記述に疑問を抱いており、『四庫全書総目提要』は李邕が李善の注釈制作時にはまだ生まれていなかったことを指摘しています。

富永一登は、李邕を持ち上げるために李善を低く評価したのではないかという見解を示しており、当時の政治的背景や評価の変遷に起因するものと考えられています。

李善は『文選』注以外にも多くの著作を持っていたとされていますが、その詳細は『漢書辨惑』30巻、『文選辨惑』10巻、さらには『文選音義』10巻などがあるものの、いずれも現存していないのが現状です。彼の影響は子や弟に伝わり、その業績は後世にも影響を与え続けています。

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