李広利

李広利（り こうり）

李広利は、前漢の武帝に仕えた武将です。妹は武帝の寵愛を受けた李夫人であり、その縁で取り立てられました。大宛遠征や匈奴討伐で活躍しましたが、最後は一族の陰謀に巻き込まれ、匈奴に降伏するという劇的な生涯を終えました。

生涯

出世

李広利は若い頃、特に定職にも就かず、自由気ままに過ごしていました。しかし、彼の運命は妹の李夫人が武帝の寵愛を受けたことで大きく変わります。当時、漢は西域との交易で多くの名馬を手に入れており、武帝は特に大宛の「汗血馬」を求めていました。紀元前104年、武帝は李夫人のために李広利を「弐師将軍」に任命し、汗血馬獲得のため大宛への遠征を命じます。

しかし、遠征は困難を極めました。李広利は数万の兵を率いて出発しましたが、道のりは遥かに遠く、食糧も不足しました。多くの兵士が命を落とし、逃亡する者も相次ぎました。結局、李広利は目的を果たせず、敦煌まで撤退します。武帝はこれに激怒し、李広利に玉門関より奥へ入ることを禁じました。

紀元前102年、武帝は再び大宛遠征を命じます。今回は、精兵6万に加え、大量の牛や馬、ロバ、ラクダを動員し、食糧を輸送させました。李広利は40日余りにわたり大宛の城を包囲し、多数の兵を殺傷しました。大宛は遂に降伏し、李広利は3千頭余りの汗血馬を得て帰還しました。凱旋後、李広利は海西侯に封じられます。

匈奴討伐と没落

紀元前99年、李広利は匈奴討伐の支援として李陵に5千の兵を与えます。しかし、李陵は匈奴の大軍に包囲され、降伏してしまいます。この責任を問われ、李陵の一族は処刑され、李陵を弁護した司馬遷は宮刑に処されました。

紀元前90年、李広利は再び匈奴討伐を命じられます。出兵前夜、彼は丞相の劉屈氂と密会し、妹の子である昌邑王劉髆を皇太子に立ててくれるよう依頼しました。しかし、この密談が露見し、劉屈氂は逮捕され処刑されます。李広利の妻子も連座して処刑されました。

この時、李広利は匈奴を追撃中でしたが、一連の事件を知り絶望します。そして、彼は匈奴に投降してしまいます。匈奴の君主である狐鹿姑単于は李広利を重用しましたが、漢からの降伏者である衛律に妬まれ、讒言によって処刑されました。

李広利の生涯は、妹の寵愛によって出世し、軍事的な成功を収める一方で、一族の陰謀に巻き込まれ、最後は異国で非業の死を遂げるという、波乱に満ちたものでした。彼の運命は、当時の政治状況や人間関係に大きく左右されたと言えるでしょう。

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