大宛

大宛（ダーユエン）：フェルガナに栄えた古代国家

大宛は、紀元前2世紀頃から中央アジアのフェルガナ地方に存在したアーリア系民族の国家です。中国の歴史書に登場し、漢との交流や汗血馬を巡る争いが記録されています。

大宛の歴史

張騫以前

フェルガナ地方は、紀元前2千年紀から定住民が暮らしており、メソポタミア文明の影響を受けていました。その後、イラン系の人々が移住し、大宛を建国しました。

張騫の西域訪問

前漢の武帝は、匈奴を挟撃するため月氏との同盟を計画し、張騫を使者として派遣しました。張騫は大宛を訪れ、漢との通商を勧めました。これがきっかけで、漢と大宛の交流が始まりました。

二度の大宛討伐

武帝は、大宛の汗血馬を欲し、購入を申し入れましたが、拒否されました。怒った武帝は、李広利を将軍に任命し、大宛討伐を行いました。一度目の遠征は失敗に終わりましたが、二度目の遠征で大宛を制圧し、汗血馬を手に入れました。

後漢以降

後漢時代には、莎車国の圧迫を受けました。西晋時代には、朝貢を行い、汗血馬を献上しました。南北朝時代には、破洛那国と呼ばれ、北魏に朝貢しました。その後、突厥の支配下に入りました。

唐代には、抜汗那国と呼ばれ、西突厥の支配下に入りました。唐は抜汗那国を寧遠国と改名し、王に竇氏を賜い、宗室の娘を降嫁させました。

大宛の文化と地理

大宛は、貴山城を治とする王によって統治され、70余のオアシスを支配していました。土着の農耕民族で、馬やワインを特産としていました。大宛国があった場所は、現在のウズベキスタン共和国のフェルガナ盆地にあたるとされています。

㤄捍国

『大唐西域記』や『新唐書』には㤄捍国という国名が記載されており、これもフェルガナの転写だと思われます。

大宛の主な王

毋寡
昧蔡
蝉封
延留
橋塞提
藍庾
摩之
昭武氏
昭武阿利柒
契苾
阿瑟那鼠匿
阿了参
遏波之
阿悉爛達干
竇氏
竇忠節
竇薛裕

大宛研究における注意点

中国の史料における記述は、必ずしも正確ではない可能性があり、考古学的成果と合わせて考察する必要があります。

参考文献

『史記』（大宛列伝）
『後漢書』（西域伝）
玄奘 著、水谷真成 訳『大唐西域記』平凡社、1999年。
岩村忍『文明の十字路＝中央アジアの歴史』講談社、2007年。
小松久男『中央ユーラシア史』山川出版社、2005年。

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