李攀竜

李攀竜（り はんりゅう）

李攀竜（1514年 - 1570年）は、明代の詩人、文人であり、後七子と称される古文辞派の代表的な人物です。字は于鱗（うりん）、号は滄溟（そうめい）。山東省済南市である歴城の出身です。

生涯

早くに父を亡くし、母親の手で育てられました。嘉靖23年（1544年）に進士となり、官僚としてのキャリアをスタートさせます。陝西提学副使などの地方官を歴任し、最終的には河南按察使にまで昇進しました。しかし、李攀竜は豪放で自負心が強い性格であったため、官吏の世界に馴染むことができず、思うように出世できませんでした。その後、官職を辞して故郷である歴城の郊外に隠棲し、母親の孝養に励みます。母親が亡くなると、その悲しみのあまり健康を害し、翌隆慶4年（1570年）に生涯を閉じました。

詩人としての活動

明代中期、李東陽らの茶陵派が復古主義的な傾向を強めていました。その流れを受け、李夢陽・何景明らの前七子が、唐代詩文の「格調」を模倣する擬古調の詩作を主張し、「格調説」と呼ばれる文学理論を展開しました。

李攀竜は、さらに擬古主義を推し進め、「文は前漢より、詩は天宝より下、倶に観るに足るものなし」という独自の文学観を打ち出しました。盟友である王世貞も「文は必ず西漢、詩は必ず盛唐、大暦以後は書を読むことなかれ」と唱え、教条主義的に擬古文体を追求しました。李攀竜と王世貞は「李王」と並び称され、謝榛・宗臣・梁有誉・徐中行・呉国倫らを加えて「後七子」と呼ばれました。

李攀竜の作品は、秦漢の文体や盛唐の詩の模倣が多く見られました。そのため、李贄や袁宏道らからは、先人の模倣に過ぎず文学を堕落させたと批判されました。しかし、格調高い文体を追求した結果、盛唐の詩に匹敵する優れた作品も残しています。

主な作品

李滄溟集：16巻からなる作品集。
古今詩刪：古詩を選んで編纂した詩集（34巻）。
唐詩選：唐代の詩を選んだ詩集。日本でも広く親しまれています。（編纂者については異説あり）

後世への影響

李攀竜の文学理論は、日本の江戸時代、荻生徂徠に始まる古文辞学派に大きな影響を与えました。

参考文献

『東洋歴史大辞典 下巻』（1941年、縮刷復刻版、臨川書店、ISBN 4653014728）
『アジア歴史事典 9』（平凡社、1984年）
『明史』巻287 李攀竜伝
『列朝詩集』丁集（銭謙益）

関連項目

後七子
擬古
古文辞学
銭謙益
袁宏道
王世貞
中国文学
* 漢詩

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