李東陽

李東陽（り とうよう、1447年 - 1516年）は、明代中期に活躍した政治家であり、詩人としても名を残しました。字は賓之、号は西涯と称しました。出身は長沙府茶陵県です。

李東陽は、父である李淳が金吾左衛軍に所属していた関係で、北京で生まれ育ちました。幼少の頃からその才能は際立っており、神童として皇帝にまで知られるほどでした。18歳という若さで進士に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせます。その後、その卓越した能力によって要職を歴任し、内閣大学士、礼部尚書、吏部尚書といった重要な役職を担いました。

文学においては、李東陽は明代の主流であった「台閣派」の詩風を批判し、古典への回帰を提唱しました。彼は文章においては唐宋八大家、詩においては盛唐、特に杜甫の詩に範を求めるべきだと主張しました。彼の詩論における特徴的な点は、詩を単に目で読むだけでなく、吟じた際に第三者が聞いた時の印象を重視する「格調説」を唱えたことです。この考えに基づき、自作の詩を詩吟の上手い者に吟じさせ、その韻律を調整したと伝えられています。

李東陽は政府の高官として長きにわたり活躍したため、多くの門人を抱えました。その中には、李夢陽や何景明といった著名な文学者も含まれていました。しかし、正徳元年（1506年）以降、内閣首輔という要職にありながら、宦官の劉瑾の専横に迎合する姿勢を見せたため、門人たちからの信頼を失い、決別されることとなりました。この出来事は、結果的に古文辞学の興隆を促す一因となったとも言われています。

李東陽の没後、その功績を称えて太師の称号と文正の諡号が贈られました。彼は政治家としてだけでなく、文学者としても明代に大きな影響を与えた人物として、後世に語り継がれています。


李東陽の生涯は、その才能と高位によって多くの人々を惹きつけ、同時に、晩年の政治的判断によって批判を受けるという複雑なものでした。しかし、彼の文学への情熱と古典回帰の提唱は、明代の文壇に新たな流れを生み出し、後世の文学に大きな影響を与えたことは間違いありません。

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