李若星

李若星（り じゃくせい）は、明末の激動期に生きた官僚であり、同時に軍人でもありました。彼の生涯は、不正と戦い、国を救おうとする熱意と、それに対する政治的な陰謀と裏切りに彩られています。字は紫垣、号を燦巌と称し、汝寧府光州息県を本貫としています。生年は不明ですが、1649年にその生涯を閉じています。

李若星は1604年（万暦32年）に進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。彼は棗強知県、真定知県を歴任し、その能力を認められて御史に抜擢されました。御史として彼は、南京兵部尚書の黄克纘を弾劾するなど、不正を許さない姿勢を示しました。また、官庫を巡視した際には、国を蝕む商業の弊害を指摘し、横領を防ぐための十庫の出納調査を請願しましたが、これは受け入れられませんでした。さらに、山西巡按として税使の撤廃を求めるなど、民衆の負担軽減にも尽力しました。

しかし、彼の正義感あふれる行動は、権力を持つ者たちにとっては目障りな存在でした。彼は再び黄克纘を弾劾し罷免を求めますが、これも聞き入れられませんでした。その後、福建右参議として赴任しましたが、病のため帰郷することになりました。

天啓帝の時代に入ると、李若星は陝西で官に復帰し、北京に召還され尚宝司少卿、大理寺少卿を歴任します。1623年（天啓3年）には右僉都御史として甘粛巡撫に任命されました。赴任の際には、天啓帝に魏忠賢と客氏の奸悪を訴えましたが、これが後に彼の運命を大きく左右することになります。1624年（天啓4年）、将軍の丁孟科や官維賢を派遣してオルドス部や松山諸部の鎮圧に成功し、240人余りを斬首するなどの戦果を上げましたが、これが魏忠賢の怒りを買い、彼を陥れる策略が巡らされました。

北京の朝廷では、李若星が義兵を挙げて魏忠賢を討とうとしているという噂が広められました。これを聞きつけた魏忠賢は、許顕純に命じて汪文言の獄の調書に李若星の名前を書き入れさせ、趙南星から賄賂を受け取ったという濡れ衣を着せ、彼の軍権を剥奪しました。1625年（天啓5年）には官籍から名前を消され、河南撫按提問に身柄を拘束されるという不遇を味わいました。1626年（天啓6年）には、天啓帝に疑獄が報告されると、杖罰100を受けた上で廉州に流され、一兵士として扱われることになりました。

1627年（天啓7年）、崇禎帝が即位すると、赦令により李若星は故郷に帰ることができました。1628年（崇禎元年）には、工部右侍郎・兼右僉都御史として再び官界に復帰し、河道を総理する任務を与えられました。甘粛での功績を評価されて秩二品に進められましたが、1629年（崇禎2年）には黄河の決壊により泗州が洪水被害を受け、睢寧城が水に浸かるという事態に直面しました。李若星は祖陵の修築と睢寧県の治所移転を請願し、これが受け入れられました。北京で戒厳が発令された際には、兵を派遣して入衛に当たらせました。しかし、病気のため帰郷し、父の死を看取ることになりました。

1638年（崇禎11年）1月、李若星は再び北京に召還され、兵部右侍郎に任命されました。同年5月には、兵部左侍郎・兼右僉都御史となり、朱燮元に代わって四川、湖広、雲南、貴州の軍務を総督し、貴州巡撫を兼ねました。彼は安位の残党である安隴璧や苗仲の反乱を鎮圧し、その功績を認められました。

明朝が滅亡し南[[明]]の福王政権が成立すると、李若星は解職されました。故郷が清軍に占領されたため、貴州に身を寄せることになりました。1647年（永暦元年）、永暦帝が武岡に移ると、李若星は吏部尚書として召還されましたが、劉承胤によって赴任を妨害されました。後に永暦帝に従い、1649年（永暦3年）、清の孔有徳が靖州を攻撃した際、兵乱の中でその生涯を終えました。

李若星は、その生涯を通じて不正と戦い、国を憂い、民衆のために尽力した人物でした。しかし、彼の正義感は、時の権力者によって幾度となく踏みにじられ、その波乱に満ちた生涯は、明末の混乱した時代を象徴するかのようです。

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