村上直 (歴史学者)

村上直（むらかみ ただし）

生涯

村上直は、1925年7月2日に東京で生まれ、2014年2月10日に亡くなった日本の近世史研究者です。法政大学の名誉教授であり、江戸時代の代官制度や大久保長安に関する研究で広く知られています。東京第一師範学校を経て、1951年に法政大学文学部を卒業。その後、東京都立大学大学院で日本史を専攻し、研究者としての道を歩み始めました。

1973年には法政大学文学部の教授に就任し、1978年には文学部長も務めました。1974年には、「江戸幕府代官制度の研究」で文学博士の学位を取得。1993年には、長年の学術研究の功績が認められ、川崎市文化賞を受賞しました。1996年に法政大学を定年退職し、名誉教授となりました。

研究テーマ

村上直の研究テーマは、江戸幕府の政治構造、関東地方を中心とした代官や幕領、そして江戸近郊の地域史でした。特に、江戸時代初期に石見銀山などの代官を務めた大久保長安については、生涯にわたり精力的に研究を続けました。その研究成果は、28編もの論文として発表され、そのうち15編は最後の著書『論集 代官頭大久保長安の研究』にまとめられました。

この著書は、八王子市民を中心とした同好会が企画したという珍しい経緯で、2014年4月に自費出版されました。しかし、その内容は幕領研究、鉱山史研究、そして関東地域史研究に大きく貢献し、第17回日本自費出版文化賞を受賞するなど、高い評価を受けました。

主な著書

村上直は、数多くの著作を残しており、その一部を以下に示します。

『代官 幕府を支えた人々』（人物往来社、1963年）
『天領』（人物往来社、1965年）
『江戸幕府の代官』（新人物往来社、1970年、国書刊行会、1983年）
『江戸幕府の天領』（飯島町歴史民俗資料館、1996年）
『江戸幕府の政治と人物』（同成社、1997年）
『江戸幕府の代官群像』（同成社、1997年）
『江戸近郊農村と地方巧者』（大河書房、2004年）
『論集 代官頭大久保長安の研究』（揺籃社、2013年）

これらの著作は、江戸時代の政治や社会、経済に関する深い知識を提供し、多くの研究者や歴史愛好家に読まれています。

共編著・校訂

村上直は、単著だけでなく、数多くの共編著や校訂も手掛けています。以下にその一部を紹介します。

『甲斐近世史の研究』（磯貝正義共編、雄山閣、1974年）
『近世神奈川の研究』（編、名著出版、1975年）
『わが町の歴史・八王子』（沼謙吉共著、文一総合出版、1979年）
『論集関東近世史の研究』（編、名著出版、1984年）
『郷土神奈川の歴史』（編、ぎょうせい、1985年）
『鷹場史料の読み方・調べ方』（根崎光男共著、雄山閣出版、1985年）
『藩史大事典』全8巻（木村礎,藤野保共編、雄山閣、1988-90年）
『徳川家康事典』（藤野保,所理喜夫,新行紀一,小和田哲男共編、新人物往来社、1990年）
『近世史用語事典』（編、新人物往来社、1993年）
『幕藩制社会の地域的展開』（編、雄山閣出版、1996年）
『徳川幕府全代官人名辞典』（和泉清司,佐藤孝之,西沢淳男共編、東京堂出版、2015年）


また、校訂・編纂も多く手がけ、歴史資料の復元・研究に大きく貢献しました。

『武野燭談』（校注、人物往来社、1967年）
『江戸幕府代官史料 県令集覧』（荒川秀俊共編、吉川弘文館、1975年）
『算法地方大成』（荒川秀俊共校訂、近藤出版社、1976年）
『江戸幕府勘定所史料 会計便覧』（馬場憲一共編、吉川弘文館、1986年）
『江戸幕府八王子千人同心』（編、雄山閣出版、1988年）
『新訂民間省要』（校訂、有隣堂、1996年）

記念論文集

村上直の還暦を記念して、以下のような論文集も出版されています。

『日本地域史研究』（村上直先生還暦記念出版の会編、文献出版、1986年）

まとめ

村上直は、日本の近世史研究において、代官制度や大久保長安の研究で多大な貢献をした研究者です。その研究成果は、多くの著作や論文としてまとめられ、現代の歴史研究においても重要な基礎となっています。また、地域史研究にも力を注ぎ、江戸時代の政治、社会、経済に対する理解を深める上で欠かせない存在です。

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