村井氏

村井氏について

村井氏は、平氏を称し、戦国時代から江戸時代、そして明治維新後まで、日本の歴史に名を刻んだ一族です。その祖は、前田利家に仕え、数々の戦で武功を挙げた村井長頼に遡ります。長頼は、織田信長や豊臣秀吉からもその功績を認められ、賞賛されたと伝えられています。

江戸時代

長頼は、文禄元年（1592年）に隠居するまでに、前田家において1万1200石を知行しました。その子孫は、江戸時代には加賀金沢藩において「八家」と呼ばれる重臣家の一つとなり、1万6569石を領しました。「八家」は、陪臣でありながら、御三家の家老と同様に官位を許される特権を有しており、村井家からは親長、長堅、長世の三人が従五位下豊後守に叙任されています。

明治維新後

明治維新後、村井家は士族となりました。当初、明治11年から16年頃にかけて作成された『華族令』案や『授爵規則』では、旧万石以上の陪臣も男爵の対象に含まれており、村井家も男爵候補に挙げられていました。しかし、最終的な『叙爵内規』では、旧万石以上の陪臣は叙爵対象外となり、村井家は士族のままでした。

明治15、16年頃の『三条家文書』に収録された『旧藩壱万石以上家臣家産・職業・貧富取調書』には、当時の当主であった村井恒（長在）の財産状況や職業が記録されています。それによると、恒は金禄公債1万円、横浜正金銀行株金1000円を所有し、職業は旧金沢藩主前田利嗣家の家令を務め、家計は相応であったとされています。

男爵家へ

旧万石以上の陪臣への叙爵が開始された明治33年（1900年）5月9日、恒の孫である長八郎が華族の男爵に叙せられました。長八郎は農商務省の官僚として各地の営林署長を歴任しました。彼の代に、村井男爵家の邸宅は東京市目黒区駒場町に置かれました。

近代

長八郎の子である長正は、昭和天皇の侍従を務めた後、日本大学の教授となりました。

このように村井氏は、戦国時代から近代まで、日本の歴史の中で重要な役割を果たした一族であり、その足跡は今日にまで語り継がれています。

まとめ

村井氏は、戦国武将村井長頼を祖とする由緒ある家系であり、江戸時代には加賀金沢藩の重臣として藩政を支え、明治維新後には華族に列しました。その歴史は、日本の武家社会から近代社会への変遷を映し出す鏡とも言えるでしょう。

参考文献

小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社〈中公新書1836〉、2006年（平成18年）。ISBN 978-4121018366。
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター〈日本人物誌叢書7〉、1990年（平成2年）。ISBN 978-4820540342。
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年（平成27年）。ISBN 978-4642014724。
森岡浩『日本名門・名家大辞典』東京堂出版、2012年（平成24年）。ISBN 978-4490108217。

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