村田嘉久子

村田嘉久子：舞台に咲いた華、その生涯

村田嘉久子（むらた かくこ、1893年4月16日 - 1969年7月26日）は、日本の舞台女優として、明治から昭和にかけて演劇界で活躍しました。その華麗な舞台姿は、多くの観客を魅了し、日本の演劇史にその名を刻んでいます。

生い立ちと帝劇での活躍

東京府荏原郡品川町北品川（現在の東京都品川区北品川）で、酒問屋「松本屋」の娘として生まれました。父親は義太夫の名手で、幼い頃から長唄や日本舞踊に親しむ環境で育ちました。その影響からか、兄は歌舞伎役者の三代目尾上蟹十郎となり、嘉久子自身も女優の道へ進みます。妹二人も後に女優となっています。

川上貞奴が設立した帝国女優養成所、後の帝劇付属技芸学校第一期生として演劇を学び、卒業後は帝劇専属女優となります。1909年、帝劇杮落としの舞台「頼朝」で侍女浪路役を演じ、初舞台を踏みました。その後、「藤十郎の恋」のお梶、「玄宗と楊貴妃」の楊貴妃など、翻訳劇や新作劇で幅広い役柄を演じ、その演技力が高く評価されました。

新派への参加と晩年

帝劇閉鎖後は、松竹の新派に加入し、井上演劇道場にも参加しました。森律子と共に、歌舞伎劇や女優劇で活躍し、新派劇の発展に貢献しました。また、明朗新劇座を結成し、新派で活躍後、フリーとなります。昭和31年には、桐座の名跡である四代目桐長桐を襲名し、後進の育成にも力を注ぎました。東宝芸能学校講師としても、多くの若手俳優を指導しました。

映画出演

舞台女優として活躍する傍ら、映画にも出演しました。代表作として、『日本誕生』、『女体』、『佐々木小次郎』、『ゲンと不動明王』、『井伊大老』、『浮舟』などがあります。映画においても、その存在感を発揮し、幅広い役柄を演じました。

死去と墓所

1969年、76歳で亡くなりました。墓所は願行寺にあり、兄である尾上蟹十郎など家族と共に眠っています。

元帝劇女優のその後

1929年に帝劇が閉鎖された後、森律子、村田嘉久子、初瀬浪子、東日出子らは、尾上梅幸、松本幸四郎らと共に松竹入りしました。松竹は当初、元帝劇女優たちを10年間は帝劇時代と同じ条件で雇用すると約束していましたが、1934年に元帝劇女優の出演映画の不振を理由にその約束を破棄し、専属契約からフリーランス制へと移行しました。

村田嘉久子は、舞台女優として、また映画女優として、日本の演劇史に大きな足跡を残しました。その演技に対する情熱と才能は、多くの人々に感動を与え、今もなお語り継がれています。

参考文献

『物語近代日本女優史』戸板康二著　中公文庫
『夜ふけのカルタ』戸板康二著　旺文社文庫
* 『東宝特撮映画全史』監修 田中友幸、東宝出版事業室、1983年12月10日。ISBN 4-924609-00-5

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