東乗鞍古墳

東乗鞍古墳 (ひがしのりくらこふん)

概要

東乗鞍古墳は、奈良県天理市の杣之内町と乙木町にある前方後円墳です。この古墳は杣之内古墳群の一部であり、歴史的な価値を持っていますが、国の史跡には指定されていません。古墳が位置するのは、奈良盆地の東側に広がる丘陵の尾根上であり、近隣には西乗鞍古墳や小墓古墳といった他の古墳も存在しています。

これまでに数回の発掘調査が行われており、その結果、古墳の形状や構造の詳細が分かってきました。

古墳の特徴

この古墳は、前方部が大きく突き出た形状が特徴で、前方部は西北西の方向を向いています。古墳の墳丘は二段に建造されており、設計当初はその長さが75メートルとされていましたが、最近の発掘調査では83メートルであることが確認されています。また、墳丘の外側では1寄った円筒埴輪の破片が発見されており、さらに墳丘の前方部西側には、幅約10メートル、深さ約2メートルの周濠も確認されています。

埋葬施設として利用されている後円部には、右片袖式の横穴式石室があり、南側に開口しています。石室の全長は14.6メートルとされており、豪華な石材が使用されています。特に、阿蘇溶結凝灰岩製の刳抜式家形石棺と、二上山白色凝灰岩製の組合式家形石棺の2基が室内に置かれています。しかし、残念なことにこの石室は盗掘に遭い、貴重な副葬品の多くが行方不明となりました。

歴史と発掘調査

東乗鞍古墳に関する記録は1893年に発表された『大和國古墳墓取調書』にさかのぼります。その後、1913年に佐藤小吉による調査が実施されるなど、古くから注目されてきました。

1981年度には奈良県立橿原考古学研究所によって墳丘の西側の発掘調査が行われ、さらに最近の2018年から2020年にかけて、天理大学と天理市教育委員会による測量調査や墳丘発掘調査が実施されました。これらの調査の結果は、2022年になって報告書としてまとめられています。

埋葬施設の詳細

埋葬施設である石室は、後円部に位置し、右片袖式横穴式石室として南向きに開口しています。具体的な寸法は次の通りです。

• - 石室全長：14.6メートル
• - 玄室：長さ約7.6メートル、幅約2.4メートル、高さ約3.3メートル
• - 羨道：長さ約7メートル、幅1.7メートル、高さ1.5メートル

この石室に使われている石材は大きな花崗岩であり、特に奥壁は3段に積まれています。玄室内には、奥壁側に位置する阿蘇溶結凝灰岩製の刳抜式家形石棺と、羨道寄りにある二上山白色凝灰岩製の組合式石棺が据えられています。

ただし、この石室は盗掘が行われており、過去に出土したとされる副葬品の多くが失われてしまいました。記録によれば、挂甲の小札や馬具の杏葉などが発見されたとされていますが、その行方は不明であり、今後の調査によって新たな発見が期待されています。

まとめ

東乗鞍古墳は、古墳時代後期前半に築かれたと推定されており、物部氏の首長墓である可能性が指摘されています。この地域の文化や歴史を知るための重要な遺跡であり、今後の研究が待たれます。古墳群の中でも特に注目される存在であり、さらなる発掘調査や研究が進められることによって、新たな歴史の解明が期待されます。

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