東亜研究所

東亜研究所の概要

1940年代初頭の東亜研究所は、1938年9月1日に設立され、当時の大日本帝国による国策のもと、人文科学や自然科学の調査を推進した重要な機関です。この研究所は企画院の外郭団体として運営され、総裁には近衛文麿が、また副総裁には大蔵公望が就任し、実質的な指導を行っていました。特に大蔵は所長としての役割を担い、助力しました。研究所の使命は人文・社会・自然科学を総合的に探求し、東アジアだけでなく、ソ連や東南アジア、中近東などの地域に対しても広範な研究を行うことにありました。

研究活動と戦争の影響

この機関は日中戦争が進展する中で、国策の樹立を支援する研究を展開しました。1940年以降は、満州鉄道の調査部と協力し、特に華北地方における「中国農村慣行調査」という重要な研究を実施しました。この調査は中国社会の理解を深めるための重要な資料となりました。さらに、太平洋戦争の際にはジャワにおける軍政のもとで、現地調査も行われ、地域に対する知見を集めました。

知識人の活動

所員の中には左派やリベラル派の知識人も多く、彼らは内地での思想弾圧から逃れてこの研究所に参加しました。例えば、経済学者の山田盛太郎をはじめ、内田義彦や水田洋など、後の社会科学に貢献した学者たちが多く在籍していました。その活動は多様であり、戦後の日本における学問の発展に寄与しました。

解散とその後

1945年8月の敗戦を経ても、東亜研究所は一時的に存続し、情報収集を続けましたが、1946年に正式な解散が認められることとなりました。その際、所蔵されていた資料や資産は、財団法人政治経済研究所に引き継がれました。また、神田駿河台に所在していた旧事務所ビルは、1951年に明治大学へ売却され、その後は学生会館として利用されました。

機関誌と関連機関

東亜研究所は1939年に機関誌『東亜研究所報』を創刊し、1944年頃までその成果を公表し続けました。研究所の設立に際し、当時の時局に影響を受けて、似たような名称の研究機関が数多く設立されました。例えば、山口高商の東亜経済研究所や、東京商科大学の東亜経済研究所などが代表的です。これらの機関の多くは、戦後のGHQによる指導の下で廃止されたり、名称変更を余儀なくされたが、山口大学の研究所はその名を維持しています。

近年では、吉林師範大学やシンガポール国立政治大学などでも同様の研究機関が存在し、東アジアの研究を行っています。歴史的な観点からも、東亜研究所は日本のアジア地域研究における重要な位置を占めていたのです。

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