東京の女 (映画)

東京の女

『東京の女』は、1933年2月9日に公開された日本映画で、松竹キネマが製作・配給を手掛けた作品です。この映画は、小津安二郎監督によって制作されたもので、モノクロ、スタンダード、サイレント形式で撮影された全体の長さは47分です。

この映画は、姉の身を案じる弟の姿を描いた感動的なストーリーで、特に人間関係の葛藤を巧みに表現しています。物語は、同年に制作が急遽決定された作品であり、次作『非常線の女』の本読みの日に、ローティションの製作が穴が開いたために急いで製作されました。シナリオが完成する前から撮影が開始され、わずか9日間で仕上げられたことが特徴です。そのため、小津監督自身は、この作品が同時期にどのように彼の映像スタイルを確立させたのかを回想しています。

あらすじ

物語の中心は、学生の良一とその姉、ちか子の二人です。ちか子は会社でタイピストとして働き、退勤後は大学で翻訳の手伝いをしていると良一は思っています。しかし、ある日、良一の恋人である春江が巡査の兄から耳にした噂を持ち込むことになります。その噂とは、ちか子が実は夜の酒場で売春をしているという内容でした。

春江はその噂を良一に話しますが、良一は激しく否定し、それが原因で二人は喧嘩になります。それでも良一の心の中では、その真実への疑念が消えず、彼は姉のちか子に真意を問いただします。実際のところ、噂は事実であり、ちか子は良一には関係のないことだと主張し、勝手に卒業を目指して勉強を続けるように言います。このやり取りの中で、良一の苛立ちが募り、ついにはちか子を平手打ちする事態となり、彼は家を飛び出してしまいます。

その翌日、春江とちか子は、良一が自ら命を絶ったことを警察から知らされます。春江は悲しみに暮れ、泣き崩れますが、ちか子は「このくらいのことで死ぬなんて」と冷静に呟くシーンが印象的です。これにより、彼らの間に秘められた感情の深さが浮き彫りとなります。

スタッフとキャスト

この映画の監督は小津安二郎で、脚色は野田高梧と池田忠雄が担当しました。撮影は茂原英朗、美術監督には金須孝が起用されています。編集は石川和雄により行われ、撮影補助には厚田雄春が参加しました。

主要なキャストには、姉のちか子を演じた岡田嘉子、弟の良一役には江川宇礼雄、春江役には田中絹代が起用されています。また、サポートキャストには兄の木下役に奈良真養、新聞記者役に笠智衆と大山健二が名を連ねています。

その他の情報

映画冒頭の字幕では、エルンスト・シュワルツの著作を下敷きにしたと示されていますが、実際には架空の作家でありストーリーはオリジナルです。また、劇中に登場する映画館のシーンで上映されている映画はアメリカのオムニバス映画『百万円貰ったら』です。

この映画は短いながらも深いメッセージを持った作品であり、特に小津安二郎監督の独特の視点が光ります。

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