東京ららばい

「東京ららばい」は、歌手・中原理恵が1978年 3月21日にCBS・ソニーからリリースしたデビュー・シングルである。この楽曲は、作詞を松本隆、作曲および編曲を筒美京平が手がけた。

リリースと背景

このシングルは中原理恵のレコードデビュー作として位置づけられているが、厳密には彼女の歌手としてのデビューは、本シングルよりも約1ヶ月早い同年2月25日に発売されたファースト・アルバム『TOUCH ME』によって果たされている。したがって、「東京ららばい」はレコードデビューシングルではあるものの、歌手デビュー曲ではないというユニークな経緯を持つ。

シングルのA面曲である「東京ららばい」は、発売当時のファースト・アルバムには収録されず、その後の同年12月5日に発売されたセカンド・アルバム『KILLING ME』に初めて収められた。一方、シングルのB面に収録された楽曲「TOUCH ME」は、ファースト・アルバムの表題曲として先行して発表されていた。

楽曲の特色と評価

「東京ららばい」の歌詞は、作詞家・松本隆ならではの都市情景描写が特徴的であり、特に東京湾（歌中では「とうきょうベイ」と表現される）、山手通り、タワーなど、東京に実在する具体的な建物やエリアが登場する。このことから、本楽曲は数ある東京のご当地ソングの一つとしても広く認識されている。

作曲は筒美京平が担当しており、都会的なメロディーと繊細なアレンジが、歌詞の世界観をより一層引き立てている。この松本隆と筒美京平という当時のヒットメーカー同士の組み合わせは、楽曲の成功に大きく寄与した。

作家の泉麻人は、自身の著書『僕の昭和歌謡曲史』の中で、この「東京ららばい」を聴いて、「"トレンド・シティ" としての東京が確立されたことを実感した曲」であると述べている。これは、高度経済成長期を経て変化し続ける東京という都市の姿を、本楽曲が鮮やかに切り取っていたことを示唆する評価と言える。

メディア露出と作品集収録

本楽曲のヒットを受け、中原理恵は同年年末に開催された『第29回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たし、「東京ららばい」を披露した。これにより、楽曲の知名度と歌手としての地位を確固たるものとした。

また、「東京ららばい」は、日本のポピュラー音楽史における重要作品として、様々な作品集やコンピレーション盤に収録されている。作曲者である筒美京平の活動40周年を記念して制作されたCD-BOX『THE HIT MAKER -筒美京平の世界-』（2006年）や、作詞者である松本隆の作詞活動30周年を記念した作品集『風街図鑑〜松本隆作詞活動30周年記念』（1999年）にも収められており、それぞれの作家の代表作として高く評価されていることがうかがえる。

その他にも、マシュー南が選曲したとされる『Matthew's Best Hit CD』や、70年代・80年代の女性ボーカルヒット集『歌姫〜センチメンタル女性ヴォーカリスト〜』、特定の年代のヒット曲を集めた『青春歌年鑑 1978 BEST30』など、多数のコンピレーション盤に収録され、世代を超えて多くの音楽ファンに親しまれている。

主なカバー

「東京ららばい」は発表から時を経てもその魅力が色褪せず、多くのアーティストによってカバーされている。主なカバー事例としては、以下のようなものがある。

中島夕紀絵（1990年）- 同名シングルに収録。
マルシア（1990年）- アルバム『Eu te amo』に収録。
チェウニ（2002年）- アルバム『Tokyo・トーキョー・東京』に収録。
ギャランティーク和恵（2011年）- DVD『歌謡グランドショー』に収録。
日野美歌（2011年）- アルバム『R40'S 本命ララバイ〜安らぎの歌謡曲〜』に収録。
青山テルマ（2012年）- シングル『君に会えるから… feat. SPICY CHOCOLATE, RYO the SKYWALKER』に収録。映画『キリン』エンディングテーマとして使用された。
八代亜紀（2013年）- アルバム『八代亜紀〜日本のポップスを唄う〜』に収録。テイチク時代の音源をCD化したもの。
宇野美香子（2015年）- アルバム『宇野美香子〜昭和ポップスを歌う』に収録。
荒牧陽子（2019年）- アルバム『リスペクト！～私が昭和を歌ったらこんな感じ！～』に収録。
田中裕梨（2019年）- アルバム『CITY LIGHTS 2nd Season』に収録。
岩崎宏美（2019年）- アルバム『Dear Friends VIII 筒美京平トリビュート』に収録。
片岡健太（sumika）（2021年）- 筒美京平トリビュートアルバム『筒美京平SONG BOOK』に収録。

これらのカバーは、ジャンルや年代を超えて本楽曲が持つ普遍的な魅力を再確認させるものである。

関連作品

「東京ららばい」に関連する主な作品としては、[中原理恵]]のファースト・アルバム『[TOUCH ME』（1978年）、シングルA面曲を網羅したベスト・アルバム『GOLDEN☆BEST 中原理恵 Singles』（規格品番：MHCL-305）などがある。また、前述の筒美京平や松本隆の作品集、あるいは複数のアーティストによるコンピレーション盤に多数収録されている。

TOUCH ME（規格品番：25AH-404/LP・DYCL-31/CD） - 1978年発売のファースト・アルバム
GOLDEN☆BEST 中原理恵 Singles（規格品番：MHCL-305） - シングルA面曲が完全収録されたベスト盤
筒美京平の世界-'>THE HIT MAKER -筒美京平の世界-（規格品番：MHCL-771/776） - 筒美京平活動40周年記念CD-BOX
松本隆_作詞活動30周年記念'>風街図鑑〜松本隆作詞活動30周年記念（規格品番：SRCL-4701/4707） - 松本隆作詞活動30周年記念CD-BOX
Matthew's Best Hit CD（規格品番：ESCL-9087）
歌姫〜センチメンタル女性ヴォーカリスト〜（規格品番：MHCL-1477）
青春歌年鑑 1978 BEST30（規格品番：TOCT-10729/10730）
歌ものがたり〜時代の歌謡曲〜
ALWAYS WITH YOU 〜いつも心に青春の歌〜
Girls JAPANESE BEST HITS COLLECTION MY MEMORIES II
* AGAIN〜女性ヴォーカリスト・スペシャル・セレクション〜

本楽曲は、1978年の音楽シーンを代表する一曲として、現在も多くの人々に聴き継がれている。

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