東京夢華録

『東京夢華録』の概要

『東京夢華録』は、南宋に活躍した孟元老によって書かれた、北宋時代の開封についての回想録です。この書は、10巻から成り立っており、当時の開封の繁栄や市民生活の詳細を知る貴重な資料です。「東京」という名称は、当時の開封の正式な呼び方である東京開封府に由来しています。

背景と歴史的な文脈

北宋は、靖康2年（1127年）に金に滅ぼされ、多くの南宋の人々は江南へ逃れざるを得ませんでした。孟元老もその一人であり、彼は紹興17年（1147年）に故郷である開封の昔を思い起こし、それを記録しました。このような背景の中で書かれた『東京夢華録』は、単なる回想録であるだけではなく、北宋時代の都市生活や文化を理解するための重要な文献です。

開封の都市生活

隋・唐代の長安は、人口が100万人に達する大都市でしたが、城郭は厳重に管理されており、条坊ごとに夜間通行が制限されていました。これに対して、北宋の開封は開放的な性格を持っていました。市中には、瓦子（がし）と呼ばれる賑わいのある地区が存在し、昼夜問わず飲食店や商店、劇場が数多く営業していました。大道芸人たちの演技も見られ、多くの市民が日常的に生き生きとした都市生活を楽しんでいました。

貴重な風俗志

『東京夢華録』は、当時の開封の退廃や繁栄だけでなく、そこに住む人々の生活様式、風俗、文化にまで焦点をあてています。この作品には、北宋時代の市民の楽しみや娯楽、商売の様子が生き生きと描写されており、歴史を知る上での貴重な資源となっています。また、孟元老の記録は、当時の社会構造や人々の交流など、さまざまな観点から分析することが可能です。

現代への影響

『東京夢華録』は、その翻訳や研究が進められており、日本語訳もいくつか出版されています。特に入矢義高と梅原郁による訳注版が1983年に岩波書店から発行され、多くの読者に親しまれています。この訳書は、一般の読者だけでなく、研究者にとっても重要な参考資料となっています。

また、いくつかの研究書や索引も出版されており、学術的な視点からも『東京夢華録』の研究が行われています。斎藤忠和編の『東京夢華録索引』や梅原郁による語彙索引などがその例です。

まとめ

『東京夢華録』は、北宋時代の開封の生活や文化を詳細に描いた貴重な史料であり、その内容は現代においても多くの人々に影響を与え続けています。都市の繁栄と市民の生活を生き生きと映し出したこの作品は、古代中国の都市文化を理解するための重要な鍵となります。

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