東京宣言

東京宣言：医師の倫理と人権擁護

1975年、世界医師会（WMA）は、拘留者や監禁者に対する拷問や非人道的待遇に関する医師の行動指針として「東京宣言」を採択しました。これは、医師が医療行為を通じて人権侵害に加担することを防ぎ、患者の尊厳と生命を守ることを目的とした重要な倫理規定です。

宣言の背景と目的

世界各地で政治的弾圧や紛争下において、医師の医学的知識が拷問や非人道的待遇に利用される事例が問題視されていました。東京宣言はこうした状況を踏まえ、医師が拷問や非人道的な行為に関与しないよう明確に規定することで、医療の倫理性を高め、人権侵害を阻止することを目指しています。宣言はその後、2005年と2006年に改訂され、現代的な状況にも対応できるようになっています。

宣言の主要な内容

東京宣言は、医師の倫理的責任を明確に示したものです。主な内容は以下のようにまとめられます。

拷問への関与禁止: 医師は、いかなる状況下においても、拷問や残虐、非人道的、人格を貶めるような行為に関与したり、それを支援したりしてはならないとされています。これは、政治的立場、犯罪の容疑の有無、紛争の有無に関わらず絶対的なものです。
医療情報の保護: 拘留者や監禁者への医療提供においては、患者のプライバシーと医療情報の秘密を守ることに最大限の注意を払う必要があります。また、ジュネーブ条約違反などの違法行為を認知した場合は、関係当局に報告する義務があります。
強制医療の禁止: 拘留者がハンガーストライキを行っている場合、その意思能力が正常に保たれていると判断された場合は、強制的な栄養補給を行うべきではありません。これは、個人の意思決定の尊重を重視する考え方に基づいています。
医師の独立性: 医師は、患者の治療やケアにおいて、臨床的に完全に独立した判断を行う必要があります。個人的、集団的、政治的な圧力に屈することなく、患者の最善の利益を第一に考えることが求められています。
* 拷問被害者への支援: 世界医師会は、拷問への関与を拒否したために脅迫や報復を受けた医師とその家族を支援し、国際社会や各国医師会にも支援を呼びかけています。

東京宣言の意義

東京宣言は、医師の倫理規範としてだけでなく、人権擁護の観点からも極めて重要な国際的な文書です。医療現場における人権侵害を防ぎ、医療従事者の倫理的な行動を促すことに大きく貢献しています。この宣言は、世界中の医師にとって、職業倫理の指針として、そして人道的な医療を提供するための規範として、これからも重要な役割を果たしていくことでしょう。

関連する概念

東京宣言と関連性の高い概念として、ニュルンベルク綱領、ジュネーブ宣言、ヘルシンキ宣言、リスボン宣言などがあります。これらは、医療倫理や人権に関する国際的な規範であり、東京宣言と合わせて理解することで、医療における倫理的な課題へのより深い理解が得られます。

東京宣言は、医療倫理の進化と人権尊重の重要性を示す重要な文書であり、今後も医師や医療関係者にとって、倫理的な行動指針として参照され続けるでしょう。

もう一度検索