東京都中野区暴力団組員殺害事件

東京都中野区暴力団組員殺害事件

本件は、1999年（平成11年）1月31日に、東京都中野区のアパートで暴力団組員の男性が殺害された事件です。被害者は頭部を硬い棒状のもので殴打され、さらに首を絞められたとされています。

事件の発覚と捜査

事件は発生から長期間経過した後、2010年（平成22年）になって初めて明るみに出ました。きっかけは、本件とは別の、仙台で発生した強盗殺人事件で逮捕された人物Cの供述でした。Cは、殺害された組員Aに恨みを抱いて犯行に及んだと証言しました。彼の供述に基づき山中を捜索した結果、Aの白骨化した遺体が発見されたのです。

Cは、犯行にはBらも関与していたと供述しました。これを受け、警視庁はCを含む4名の容疑者を、2010年2月10日に殺人の容疑で逮捕、あるいは再逮捕しました。その後、C、B、Dの3名が殺人罪で起訴されるに至りました。なお、遺体の遺棄については、公訴時効が成立していました。

裁判の経過

起訴された3名の裁判は、それぞれ異なる経過をたどりました。

被告人Cの裁判

Cは本件殺人のほか、仙台の強盗殺人事件でも起訴されていました。裁判の途中で、彼は覚醒剤取締法違反による有罪判決が確定していたため、刑法の併合罪の規定は適用されませんでした。

仙台の強盗殺人事件に対しては無期懲役の判決が確定しています。本件殺人事件については、本来であれば無期懲役が適用されるべきところでしたが、Cの自首が認定されたため、自首減刑が適用され、懲役15年の判決が言い渡されました。しかし、すでに無期懲役の判決が確定していたことから、刑の調整により、本件における有期刑は科されないことになりました。

被告人Bの裁判

事件当時少年であったBは、一貫して容疑を否認しました。裁判は2011年3月に仙台地方裁判所で始まりましたが、直後に東日本大震災が発生した影響で中断され、裁判員が選び直されることとなりました。再開された裁判は、証人尋問などが一切行われず、DVDによる証拠調べのみで審理が進められるという極めて異例の形式となりました。

2011年9月1日、仙台地方裁判所はBに対し、求刑懲役13年に対し無罪判決を言い渡しました。判決では、逮捕の決め手となったCの供述について、恨みによる犯行としながらも直接手出ししていない点などを挙げ、その信用性に疑問を呈しました。また、凶器が発見されていないことなど、客観的な証拠が不足している点も指摘されました。

この無罪判決は、裁判員裁判における殺人事件としては3例目にあたり、少年が殺人罪で無罪となるケースとしては裁判員裁判開始以来初めてのことでした。検察側はこの判決を不服として控訴しましたが、2012年9月27日、仙台高等裁判所は検察側の控訴を棄却する判決を言い渡し、Bの無罪が確定しました。

被告人Dの裁判

Dは本件殺人のほか、他の2つの殺人事件でも容疑がかけられており、裁判員裁判としては初めて、これら3つの事件を別々に審理する「三区分」による裁判が行われました。

検察側は、唯一の直接証拠であるCの証言に基づき、Dが2段ベッドの下段に寝ていた組員を鉄パイプで何度も殴打したと主張しました。しかし、裁判所は現場での再現実験などを試みた結果、そのような殴打は物理的に不可能であるとして、Cの証言の信用性を否定しました。

2011年10月6日、仙台地方裁判所（鈴木信行裁判長）は、区分審理の裁判員裁判としては全国で初めて、Dに対して無罪の部分判決を言い渡しました。検察側はこの判断についても不服として控訴しました。

関連する事件

仙台風俗店経営者強盗殺人事件: Cが逮捕され、本件発覚の端緒となった事件です。CとDが関与したとされ、Cには無期懲役判決が確定しています。
亘理町自衛官殺害事件: Dが関与したと疑われた事件の一つです。

本件は、長期にわたる捜査を経て解決に至った事件であり、特に裁判においては証拠の信用性や手続きの異例性が注目されました。

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