東名山北バス事故

東名山北バス事故

東名山北バス事故は、1995年（平成7年）8月10日に神奈川県足柄上郡山北町の東名高速道路上で発生した重大な交通事故です。この事故により、社会科見学に向かっていた小学生を含む多数の尊い命が失われ、また多くの負傷者が出ました。事故の主な要因として、追突した大型トラックの積載重量違反（過積載）が問題視されました。

事故発生の状況

事故は1995年8月10日の午前8時25分頃、東名高速道路の上り線、御殿場インターチェンジと大井松田インターチェンジの間に位置する山北町向原付近で発生しました。片側3車線の道路で、追い越し車線を走行していた大阪府の運送会社に所属する大型トラックが、左から2番目の車線（走行車線）を進んでいた静岡県の岳南鉄道運行の観光バスの後部に激しく衝突しました。

突然の強い衝撃を受けた観光バスは、進路を大きく乱し、まず道路の右側壁に衝突しました。その反動で車体が跳ね返され、今度は左側の分離帯に激突しました。この二度の衝突により、バスの車体は大きく損壊し、特に屋根部分が剥がれ落ちるほどの凄惨な状態となりました。追突したトラックも損傷しましたが、バスほどの破壊には至りませんでした。

バスに乗っていた人々と被害

事故にあった観光バスには、静岡県富士市立伝法小学校の4年生から6年生の児童38名と、引率の富士市職員、バスガイドなど、合わせて43名が乗車していました。彼らは公民館が主催する社会科見学の途中で、東京にあるガスの科学館や葛西臨海水族園を訪れる予定でした。

この悲劇的な事故により、乗っていた人々のうち3名が命を落としました。犠牲となったのは、小学4年生の男子児童（9歳）、同行していた富士市職員の男性（30歳）、そしてバスガイドの女性（29歳）です。いずれも首を強く打つなどの致命傷を負ったとされています。その他、バスの乗員乗客合わせて40名が重軽傷を負いました。また、追突したトラックの運転手（大阪府松原市の男性、43歳）も怪我を負いました。

事故の原因とその後の経過

事故の捜査を進める中で、追突したトラックに積まれていた荷物の量が大きな問題となりました。このトラックは最大積載量が2.75トンであるにも関わらず、プラスチック製品や化粧品など、5.36トンもの貨物を積載していました。これは規定で定められた積載可能重量の倍近い量であり、過積載が追突時の制動距離の延長や、衝突の衝撃を増大させた要因の一つと考えられています。

事故発生から間もない1995年8月12日、神奈川県警察の交通指導課と高速道路交通警察隊は、トラックを所有する運送会社（大阪府羽曳野市）の家宅捜索を実施し、運行実態や管理体制について詳しく調べました。そして8月29日までに、トラックの運転手と運送会社は、業務上過失致死傷罪および道路交通法違反（過積載）の疑いで書類送検されました。

この事故は、過積載運行の危険性を改めて社会に強く認識させる出来事となり、その後の貨物運送における安全管理の重要性や法規遵守の徹底が改めて問われる契機となりました。

参考文献

毎日新聞縮刷版（1995年8月）
読売新聞縮刷版（1995年8月）

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