東城鉦太郎

東城鉦太郎：戦争画に情熱を注いだ明治の画家

東城鉦太郎（とうじょう しょうたろう）は、1865年（元治2年）に生まれ、1929年（昭和4年）に没した、明治から昭和にかけて活躍した日本の画家です。彼は主に戦争画を得意とし、特に日露戦争における日本海海戦を描いた連作でその名を知られています。

生涯

東城鉦太郎は、現在の東京都豊島区にあたる場所に生まれました。1882年（明治15年）には大蔵省印刷局に勤務し、そこでイタリア人絵師エドアルド・キヨッソーネや川村清雄に師事し、絵画の基礎を学びました。1887年（明治20年）には東京府工芸品同進会に出品して褒状を受け、1889年（明治22年）には明治美術会展に出品し、後に同会の会員となっています。

1902年（明治35年）に明治美術会が解散した後、東城は師である川村清雄や二代目五姓田芳柳らとともに巴会を結成し、その後は毎年展覧会に出品しました。1906年（明治39年）2月には海軍省の命により、日露戦争海戦画を制作しています。1910年（明治43年）には日英博覧会開催を機に渡英し、海外の美術に触れました。1929年（昭和4年）に千葉県の房州で64歳で亡くなっています。

代表作：三笠艦橋の図

東城鉦太郎の代表作として知られるのが、日本海海戦においてZ旗を掲揚した直後の連合艦隊旗艦三笠の艦橋を描いた「三笠艦橋の図」です。この絵には、当時の緊迫した状況下で指揮を執る東郷平八郎大将をはじめ、秋山真之中佐、加藤友三郎少将など、歴史に名を残す多くの人物が描かれています。

描かれている人物

東郷平八郎大将（連合艦隊司令長官）
加藤友三郎少将（参謀長）
秋山真之中佐（参謀）
伊地知彦次郎大佐（艦長）
* 安保清種少佐（砲術長）

その他、伝令や測的係など、当時の艦橋にいた様々な役割の人物が詳細に描かれています。それぞれの表情や動きから、当時の緊迫感が伝わってくるようです。

作品の変遷

現在知られている「三笠艦橋の図」は、関東大震災で焼失した後に描き直されたものです。そのため、初期の作品とは煙突の煙の描写やハンモックの縛り方などに違いが見られます。近年では、初期の作品には秋山真之が描かれていなかったとする説もありますが、これは誤った情報に基づいていると考えられています。

内田巌による評価

画家の内田巌は、この作品を「明治戦争画の傑作」と評し、「当時の単なる記録としてばかりでなく、『皇国の興廃この一戦にあり』というたくましい精神を強く我々に与えるものである」と述べています。この言葉からも、「三笠艦橋の図」が単なる戦争の記録画としてだけでなく、当時の日本の精神を象徴する作品として高く評価されていたことがわかります。

東城鉦太郎は、その生涯を通じて戦争画を中心に制作し、日本の近代美術史にその名を刻みました。彼の作品は、当時の社会情勢や人々の感情を色濃く反映しており、歴史資料としても貴重な価値を持っています。

もう一度検索