安保清種

安保清種の生涯

安保清種（あぼ きよかず）は、1870年（明治3年）に佐賀県で生まれ、1948年（昭和23年）に77歳で没した日本の海軍軍人です。海軍大将、正三位勲一等功四級男爵という高い位階と勲章を持ち、濱口内閣では海軍大臣を務めました。東京都新宿区にある「安保坂」は、彼の邸宅があったことに由来します。

海軍軍人としての経歴

安保清種は、海軍草創期に活躍した沢野種鉄大佐の三男として生まれました。当初は康三郎と名乗っていましたが、後に林家の養子となり、林清種と改名。さらに、養父の改姓に伴い安保清種となりました。海軍兵学校18期生として、加藤寛治などと同期で学びました。

日清戦争では、防護巡洋艦「厳島」の分隊士として出征し、黄海海戦や威海衛攻撃に参加。日露戦争では、日本海海戦において連合艦隊旗艦「三笠」の砲術長を務め、艦隊の射撃指揮で大きな功績を挙げました。この際、ロシア艦艇名を水兵に覚えさせるために、似たような日本語で覚えさせたという逸話は有名です。たとえば、戦艦アリョールを「蟻寄る」、インペラートル・アレクサンドル3世を「呆れ三太」、オスラービアを「押すとぴしゃ」などとしました。

しかし、戦後は海上勤務が少なく、軍政や軍令のキャリアを積みました。1923年には艦政本部長、翌年には海軍次官を務めました。軍令部では、第1班長や次長を歴任し、山下源太郎軍令部長を補佐しました。ワシントン軍縮条約後の混乱期には、軍政と軍令の両面から事態の収拾に貢献しました。

海外勤務も多く、イギリス駐在や大使館附武官、国際連盟日本海軍代表などを務めました。ロンドン軍縮会議には顧問として参加しています。

海軍大臣として

1927年に海軍大将に昇進し、1930年には濱口内閣で海軍大臣に就任しました。当時、統帥権干犯問題で海軍内部が混乱していたため、安保は艦隊派と条約派の対立を解消するために尽力しました。海軍省と軍令部の幹部を大幅に入れ替えましたが、それが混乱を招き、谷口尚真軍令部長の更迭運動に繋がりました。後任を模索中に濱口首相が襲撃され死去。安保は後任を決定できないまま、海軍大臣を辞任しました。後任の大角岑生海軍大臣が伏見宮博恭王を軍令部長に選出したことが、条約派追放の遠因となりました。

その後

1934年に予備役となり、貴族院男爵議員に当選。1940年に退役し、1946年に公職追放となりました。追放中の1948年に胃がんのため77歳で亡くなりました。墓所は青山霊園にあります。

栄典

安保清種は、数々の位階と勲章を授与されています。正五位から正三位まで昇進し、勲一等瑞宝章や旭日大綬章などを受章しています。また、フランスやイタリアからも勲章を授与されています。

著書

安保清種は、以下の著書を執筆しています。
『東郷元帥と日本海海戦 所謂一九三五-六年の危機』
『銃後独話』
* 『武将夜話 明日の海』

安保清種は、激動の時代を生きた海軍軍人として、その功績と影響は今日まで語り継がれています。

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