東武トク500形客車

東武トク1形客車の歴史と運用

東武トク1形客車（通称トク500形）は、かつて東武鉄道が優等列車用に保有していた展望車及び貴賓車です。1929年に日光線が開業する際に、観光輸送を目的として製造されました。特に豪華な内装が施され、定員20名を収容可能な設計となっています。ここでは、トク1形の実車の概要や、戦前・戦後の運用について詳しく解説します。

実車の概要と製造

トク1形の製造は、日本車輌製造東京支店によって行われました。木造で作られたこの客車は、8名定員のオープンデッキの展望室兼食堂、8名の随員が利用するための専用室、さらに料理室やボーイ室を備え、その豪華さから「貴賓車」と呼ばれていました。

この客車は、婚礼や旅行などの団体専用列車として広く使用され、1930年11月からは特別車座席券制度の導入に伴い、一般旅客も利用できるようになりました。その結果、特急列車の最後尾に連結されることが多くなり、観光を意識した運用が進みました。

ただし、運転台がなく他の列車の最後部にしか連結できないため、運転手の手間がかかる欠点がありました。さらには、デハ10系のような新型の特急車両が導入されると、次第にトク1形の稼働頻度は減っていきました。1943年には戦時体制の影響で廃車扱いになり、その後は工場の事務所として使われ続けましたが、劣化が進行しました。

戦後の運用と改造

戦後は、連合軍の専用列車に再度使用されることを計画しましたが、木造の特性から耐久性や耐火性の問題が指摘され、観光団体列車としての改造が行われました。展望台は密閉式となり、内装も一新され、スタンドバーを新設するなどの改造が施されました。

1949年からは、鬼怒川温泉行きの特急列車に随時連結されるようになりました。しかし、使い勝手の悪さは変わらず、鬼怒川温泉駅への到着時には方向転換のために一度回送が必要でした。1950年からは、定期運用が設定されましたが、5700系の登場により使用頻度は再び減少し、最終的には1957年に廃車になりました。

廃車後の運命

廃車後は西新井検車区で詰所として使用され、1966年の移転に伴い用途を失い解体されました。ただ、2023年に就役した特急電車N100系（SPACIA X）は、トク500形を思わせるデザインが施されています。

トク500形の復元

また、1981年には東武鉄道の創立80周年を記念し、トク500形の復元車が製造され、東武動物公園に設置されましたが、1996年には老朽化によって解体されました。

トク1形客車は、その豪華さと歴史的意義により、今でも多くの鉄道ファンに親しまれ続けています。東武鉄道の魅力のひとつとして、また貴賓車研究の重要な一例として、語り継がれています。

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