東武ED610形電気機関車

東武鉄道ED610形電気機関車についての詳細

概要

東武鉄道ED610形電気機関車は、かつて東武鉄道で使用されていた直流貨物用の電気機関車です。この機関車の製造は、特に貨物輸送を円滑化するための重要な決定から生まれました。日光電気軌道は、清滝にあった古河電気工業日光電気精銅所から国鉄日光線を通じて銅製品を出荷するために興った路線でもあり、その重要性が高まりました。もともとこの路線は、道路上を共用する形で建設され、編成や列車長が規制されていました。このため、当初は電動貨車や電車による貨物の牽引が行われ、その後しばらくの間、特定の貨物輸送に依存していました。

運用の歴史

戦時中には、電動貨車の急増が行われるなどの状況の中、1944年には国鉄との貨車直通の許可が下り、名古屋発の新型電気機関車が東武鉄道に貸し出され、貨物輸送の運用を強化しました。これにより、従来のED4000形からの転換も進められましたが、依然として低速という課題が残りました。このため、1955年にED610形が製造され、当時のニーズに応じた性能向上を図りました。

車体の特徴

ED610形の車体は全溶接構造で、流線形のデザインを採用しています。運転台は前後に設置されており、デッキも両側に備えています。この構造は、1950年代から1960年代の箱形電気機関車に共通する特徴で、実際のサイズよりも大きく見える印象を与えます。前照灯や制動灯の配置も工夫され、特に路面併用軌道の要件を考慮した設計がなされています。

技術的な詳細

この機関車には、国鉄大井工場から払い下げられた主電動機が搭載され、定格出力320kWを実現しました。主制御器は一般的な電気機関車用の仕様で、発電ブレーキを含む多様な制御機能を有しています。ブレーキは直通・自動空気ブレーキが併設されており、安全性にも配慮されています。

運用状況

ED610形は、日光軌道線で貨物列車の牽引役を担い、1956年には余剰となったED4000形の後継として活躍しました。しかし、1968年の路線廃止に伴い、不必要となり廃車される運命にありました。その後、譲渡されて再整備を受けたのち、三菱金属鉱業へと転用され、栗原電鉄での運用が始まりました。ですが、同社の閉山により最終的に1987年に廃車され、現在は日光市の鉄道愛好家により保存されています。

参考文献

本機関車に関する詳細な情報は、寺山一昭の『日光の電車 (1 - 8)』及び様々な鉄道に関する年鑑や資料に基づいています。また、『世界の鉄道』や『鉄道ファン』などの専門的な雑誌における文献も参照されています。これらは、ED610形に関しての貴重な歴史的資料でもあり、今後の研究にも活用されるでしょう。

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