東洋艦隊 (ドイツ)

東洋艦隊について

東洋艦隊（とうようかんたい、独: Ostasiengeschwader）は、1890年代半ばから第一次世界大戦が勃発する1914年まで、ドイツ帝国海軍が主体となって運用された艦隊のひとつであり、主に太平洋での活動を行っていました。この艦隊は特に中国やその周辺地域におけるドイツの利権を保護する役割を担っていました。

歴史的背景

清国（現在の中国）には1831年からイギリス海軍が駐留しており、1861年には北京条約によりプロイセン（後のドイツ）の軍艦も中国の領海での活動が許可されました。この時期、極東地域はドイツ帝国誕生後、経済的および政治的に重要な場所として注目され、1881年には海軍将官の指揮する遊撃艦隊が編成されました。しかし、1885年にはアフリカ植民地の重要性が増したことから、東アジアの艦隊は2隻の小型艦に縮小されました。

東洋艦隊の成立

1894年の日清戦争によってドイツは再び中国に対して興味を見せ、皇帝ヴィルヘルム2世の後押しで海軍少将パウル・ホフマンが指揮する「極東巡洋艦隊」が編成されます。ホフマンにはドイツの利権を守り、中国における軍事拠点を探すことが求められましたが、艦艇の数が少なかったため、本国に艦艇の増強を求めた結果、いくつかの新しい艦艇が配備されました。

しかし、当時の艦隊は基地を持たなかったため、メンテナンスや補給に苦しむこととなり、香港や上海、日本の長崎に依存せざるを得ませんでした。その状況を打破するため、後任の海軍少将アルフレート・フォン・ティルピッツは基地候補地の評価を行いましたが、最終的には膠州湾（現在の青島）を選定しました。

膠州湾の占領

1897年、ドイツ人宣教師が殺害される事件が発生し、これはドイツによる軍事行動の口実となりました。ディーデリヒス海軍少将は膠州湾を占拠し、1898年には独清条約によってこの地域を99年間租借することを決定しました。このことにより、貧しい漁村だった青島にドイツの海軍基地が建設され、東洋艦隊は拡充されていきます。

第一次世界大戦とその影響

1914年8月、第一次世界大戦が開戦すると、シュペー伯爵指揮下の東洋艦隊は数的に劣勢であり、特に大日本帝国海軍が警戒の最重点でした。東洋艦隊は主に通商破壊を行い、インド洋で英国及びその連合国の艦船を標的にしましたが、最終的には連合国の艦船との交戦で多くを失うことになります。

帰還を試みた艦隊は1914年11月のコロネル沖海戦でイギリス艦隊と交戦しましたが、その後も困難な航海を続け、フォークランド沖海戦において多くの艦艇が撃沈されました。東洋艦隊の残った艦艇は青島で修理中でしたが、戦争状況が悪化すると自沈する道を選ぶことになります。

日本による占領後の状況

戦後、日本は青島を占領し、膠州湾租借地を手に入れました。1915年には中華民国に対し、租借権の移譲を強要し、最終的にはその権利を承認させました。しかし、その後も五・四運動などの抗日運動が激化し、中華民国が瓦解する中、日本も1922年に膠州湾を中華民国に返還することとなります。

このように、東洋艦隊はドイツ帝国の軍事的野望を具現化し、また第一次世界大戦を通じてその運命を大きく変える要因となりました。

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