東甌

東甌（とうおう）

東甌（拼音: Dōng'ōu）は、紀元前472年から紀元前138年まで存在した国で、越王勾践の子孫である東甌王が封じられました。現在の浙江省温州市付近に位置しています。

歴史

建国

紀元前472年、越王勾践が呉を滅ぼした後、その子弟が各地に分封されました。この際、東甌公が東甌の地に封じられたのが、東甌の始まりとされています。

甌越族の形成

紀元前333年、勾践の7世の孫である無彊が楚によって殺害され、越は瓦解しました。越国王族の一部は江南沿岸地域、現在の温州一帯に逃れ、現地の甌人（百越諸部族の一支族）と融合し、甌越族を形成しました。その首領が東甌王となりました。また、越王族の一部は福建省へと逃れ、現地の閩人（同じく百越諸部族の一支族）と融合し、閩越族を形成しています。閩越王と東甌王は共に勾践の子孫でしたが、族長としての地位や正統性を巡って対立することがありました。

秦による支配

紀元前221年、始皇帝が中国を統一すると、東甌王騶揺および閩越王騶無諸の王号は廃止され、君長と改められました。その地域には閩中郡が設置されました。これにより、東甌は名目上滅亡したとされますが、実際には郡を設置したものの、統治方法は以前と変わらなかったと伝えられています。

復興

紀元前209年、陳勝・呉広の乱が発生すると、秦の支配下にあった各地の部族も活動を開始しました。東甌王騶揺と閩越王騶無諸は、越人を率いて鄱陽令呉芮を支援し、反秦活動を行いました。

秦滅亡後、項羽は呉芮を衡山王に封じましたが、越人の勢力が強大になることを警戒し、騶揺を王に封じることはなく、都尉に封じたのみでした。この処遇に不満を持った騶揺は、楚漢戦争で劉邦を支援し、漢朝の創設に貢献しました。

紀元前202年、劉邦は騶無諸を閩越王に封じ、紀元前200年には騶揺を海陽斉信侯に封じ、「閩君」または「閩越君」の称号を与えました。紀元前191年、漢は建国の際の恩賞として騶揺に東甌王の称号を与え、騶揺は東甌（現在の浙江省温州市）を都と定め、東甌国を再建しました。

呉楚七国の乱

紀元前154年、呉王劉濞が反乱を起こすと、東甌王もこれに呼応して挙兵し、呉楚七国の乱に参加しました。

滅亡

呉楚七国の乱が鎮圧されると、呉国の太子劉駒は閩越に逃れ、その保護を受けました。劉駒の挑発により、紀元前138年に閩越と東甌の間で内紛が発生し、閩越王騶郢（騶無諸の子）が東甌を攻撃、東甌王騶貞復（騶揺の次王）が殺害されました。武帝は中大夫厳助を会稽から派遣し東甌国を支援、閩越軍は撤退しました。新たに東甌王となった騶望（騶貞復の次王）は、閩越の圧力に耐えきれず、一族を率いて廬江郡龍舒県（現在の安徽省六安市舒城県）へ移住し、前漢朝より広武侯に封じられました。これにより、東甌国は前漢朝の行政上から姿を消しました。

しかし、甌越人は故地に留まり、また多くの人々は戦乱を避けて周辺の東海各島へと散らばっていきました。

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