東禅寺 (可児市)

東禅寺の歴史と文化

東禅寺は、岐阜県可児市久々利に位置する臨済宗妙心寺派の寺院で、山号を久昌山と称します。本尊として釈迦如来を祀り、尾張藩の重臣であった千村平右衛門家の菩提寺として、その歴史を刻んできました。

寺の創建は不詳ですが、その起源は木曾義昌の菩提寺として、下総国（現在の千葉県旭市）に建立された東漸寺に遡ります。寺号は木曾義昌の法号に由来し、その後、木曾氏の一族である千村良重が徳川家康から美濃国に知行所を与えられ、久々利村に千村陣屋を構えたことが、東禅寺の成立に深く関わっています。

慶長16年（1611年）に、千村良重は寺号を東禅寺と改め、東漸寺三世の藍外正秀を招いて梁南禅棟を開山しました。二世の十翰智哲と三世の了伝智歇は、共に妙心寺の本山で紫衣を賜るという栄誉に浴しています。しかし、詳細な年代は不明ですが、五世の梁州祖禅の時代には祝融の災いに遭い、寺は一時的な困難を経験しました。

十二世住持の蓬州禅苗の時代には、卓洲胡僊の法嗣として、多くの雲水が修行のために集まり、最盛期には50～70人もの雲水が在住していました。しかし、慶応元年（1865年）には、僧堂とともに古虎山永保寺に移されることとなりました。

東禅寺は、可児市内における臨済宗妙心寺派の重要な法源寺の一つであり、境内には可児四国五十一番札所である弘法堂があります。地域の人々にとって、東禅寺は信仰の場としてだけでなく、歴史と文化を伝える重要な場所となっています。

千村氏墓所

本堂の西側には、千村平右衛門家歴代の墓石が並ぶ千村氏墓所があります。千村良重の墓石は廟に納められており、隣には良重の妻の墓である五輪塔があります。この五輪塔の台座には「慶長十七年五月　寶宅恵光大姉」と刻まれていますが、石に刻まれた「空・風・火・水・地」の五文字の順序が逆になっている点が特徴的です。

二代から五代までの墓石は良重の墓の西側に東面して並び、六代から十一代までの墓石は北側の山裾に南面して並んでいます。これらの墓石は、いずれも高さ約3mの板碑型であり、可児市の文化財に指定されています。墓所には、一族の部屋住みの者や内室の墓も含まれており、千村氏一族の歴史を今に伝えています。

また、寺の裏山の墓地には、久々利九人衆や家臣の墓があり、東禅寺が地域社会と深く結びついていたことを物語っています。

東禅寺は、その歴史的価値と文化的重要性から、地域の人々にとってかけがえのない存在であり、今後もその歴史と文化を伝えていくことが期待されます。

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