東西洋考

『東西洋考』の概要

『東西洋考』（とうざいようこう、拼音：Dōng-xī-yáng-kǎo）は、明代の中国の文人、張燮によって著され、1617年に発表されました。この書は、海澄県令・陶鎔の要請に応じて執筆が始まりましたが、一時中断を経て、漳州府の督餉別駕・王起宗の再度の希望によって完成されました。このように、半官半民の性質を持つ作品です。

本書は、内容的に前半と後半の二つに大別されており、前半は巻1から巻6までが「東洋」と「西洋」に関する各国の情報を網羅しています。具体的には、各国の「概略」、「形勝名蹟」、「物産」、「交易」に関する章が設けられていますが、紅毛番については「形勝名蹟」の章がありません。後半の巻7以降では、税制や航路、外交文書などについての考察が行われています。

版本一覧

本書にはいくつかの版本が存在し、それぞれ異なる図書館や研究機関で保管されています。

• - 万暦刻本（北京図書館蔵）
• - 明刻本（廈門大学南洋研究所蔵）
• - 四庫全書本（北京図書館文津閣本）
• - 惜陰軒叢書本（商務印書館の叢書集成、国学基本叢書元本）
• - 影印本（正中書局本、1961年）
• - 台湾商務印書館本（1970年）
• - 謝方氏の校訂による中華書局本（1981年）

各巻には序文や小引、具体的な内容が細かく組織されており、特に巻一から巻六では西洋の諸国と、それに関連する地域の記述がなされています。具体的な国名としては、交阯や占城、暹羅、日本、紅毛番などが挙げられ、細かな地域ごとの情報が網羅されています。

研究史と史料的価値

『東西洋考』は、明王朝時代の中国における南シナ海の海上活動に関する重要な記録とされています。この書に関する詳しい研究は十分ではないものの、謝方氏の校訂本には解説と地名索引が含まれているため、一定の価値を持っています。研究者・石田幹之助は本書を南海史や南海交渉史のような資料として評価し、明代における各国に関する情報の正確性や詳細さを指摘しました。

本書が持つ情報の信頼性については、残念ながら詳細な検討がなされていない部分が多いですが、明代の海洋貿易や外交関係を考察する上で欠かせない貴重な史料であることは、間違いありません。この書は、当時の中国と周辺諸国との関係を理解するために役立つ資源となっています。著者の張燮が描いた情報は、古代から明代にかけての海上貿易の様相や、各地域の特色を知る手助けとなるでしょう。

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