東郷神社 (福津市)

東郷神社（とうごうじんじゃ）

福岡県福津市渡に鎮座する東郷神社は、日露戦争における日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を打ち破り、日本の勝利に大きく貢献した東郷平八郎元帥海軍大将を祭神としています。福津市の北西部、玄海国定公園に指定された大峰山の山頂付近に位置し、豊かな自然に囲まれた場所にあります。

神社創建の経緯

東郷神社は、東郷平八郎と生前親交があり、彼の偉業に感銘を受けた宗像郡津屋崎町（現在の福津市）出身の獣医師、安部正弘の提唱によって1922年（大正11年）に計画が始まりました。

安部は、獣医科の学校で学んだ後、熊本県立阿蘇農学校の獣医科担任となります。その後、伊地知竹と結婚しますが、義父は伊地知一海軍大佐であり、鹿児島出身でした。安部は東京時代に東郷家に出入りしたこともあり、平八郎の弟である東郷実岳が結婚の仲立ちをしています。日本海海戦記念事業への情熱は安部の個性による所が大でしたが、東郷家との縁も影響していたと考えられます。

1921年10月には、安部が日本海海戦記念保存会を発足。会長には中村清造（代議士）、副会長には吉永開（県会議員）が就任し、安部自身は幹事長を務めました。東郷平八郎本人や、当時の福岡県知事、内務部長、警察部長など、多くの名士が賛助に名を連ねました。東郷の承認を得て、大峯山を東郷公園と名付け、島村速雄による銘碑が建立されました。1922年6月には、東郷公園内に日本海海戦記念碑建設の許可を得て、九州帝大臨海実験所の二階を借り受け、日本海戦記念館として記念品を陳列しました。

1925年3月には、日本海海戦で降伏した元ロシア軍艦アプラキシンを接収し改名した「沖ノ島」艦を買収。津屋崎港近くに展示館として一般公開することに成功しました。この「沖ノ島」艦は、ワシントン海軍軍縮条約によって廃艦となる予定でしたが、安部の熱心な運動によって津屋崎町に譲渡されたのです。

1926年3月、日本海海戦記念保存会は、内務大臣、海軍大臣から財団法人化の認可を受け、会名を「日本海戦偉蹟保存会」に変更。同年には、東郷公園内の陸軍監視哨跡に、保存会役員の拠金によって監視哨跡の碑が建立されました。題字は東郷平八郎、碑文は森岡守成（陸軍大将）によるものです。

1928年に九州帝大臨海実験所が廃止されたため、安部の私宅地内に仮記念館を設置。1930年3月には、沖ノ島艦の所有権を津屋崎町から保存会に移転する手続きが承認されました。同年、東京上野公園で開催された日本海海戦二五周年記念事業「海と空の博覧会」に、保存会の記念品が出品され、その謝金で1933年に宮地嶽神社裏に記念館を建設しました。1934年6月には、東郷公園内に日本海海戦記念碑が建立され、東郷平八郎の死去後に除幕式が行われました。1935年には、遺髪の奉安殿が建設されました。

しかし、日中戦争から太平洋戦争へと戦局が拡大すると、東郷公園の開発は見向きもされなくなり、公園内には監視哨が設けられ、施設や建物は海洋訓練場として使用されるようになりました。戦争末期には、学徒が出陣や勤労動員に駆り出され、海洋訓練も中止となり、陸軍部隊が駐屯。公園の周囲は塹壕や防空壕が張り巡らされ、敵の上陸に備えることとなりました。

このような状況の中、宗像郡町村会は東郷神社建設申請嘆願書を提出しますが、内務省は東京と鹿児島に神社を創建する方針を決定。津屋崎への創建は許可されませんでした。しかし、地域住民の熱意は消えることなく、1971年5月、ついに鳥居や社殿が造られ、現在の東郷神社の形が整いました。安部正弘は、その2ヶ月後に亡くなりました。

東郷公園と名士たち

神社が創建されなかった時代も、東郷公園は地域住民の東郷平八郎への敬愛の念を繋ぎ止める場所として機能しました。多くの人々が公園や記念館を訪れ、その中には賀陽宮恒憲王、永田秀次郎、山崎達之輔などの著名人も含まれていました。

東郷神社の現在

現在の東郷神社の境内には、戦艦「三笠」の主砲の先端や弾が展示され、宝物館には「三笠」の模型や東郷の書簡、勲章などが展示されています。毎年5月27日（旧海軍記念日）には春季大祭が、12月22日には元帥誕生祭が執り行われます。

神社の周辺は東郷公園として整備され、大峰山の山頂には戦艦三笠の艦橋を模した日本海海戦紀念碑が建ち、天候の良い日には小呂島、沖ノ島、壱岐、対馬などを望むことができます。

交通アクセス

JR九州鹿児島本線: 福間駅から西鉄バス5番津屋崎橋行きに乗車し、終点下車後徒歩約21分。
マイカー: 九州自動車道古賀インターチェンジから約11km。
* 駐車場あり

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