松井つね

松井つねの生涯と新選組の歴史

松井つね（まつい つね、1837年9月10日 - 1892年7月20日）は、江戸時代末期から明治時代にかけて生きた日本の女性であり、新選組の局長である近藤勇の正妻として知られています。彼女の生涯は、新選組の歴史と密接に関連しており、その存在が歴史の中で果たした役割は無視できません。

出生と家族

天保8年、つねは清水徳川家の家臣・松井八十五郎の長女として生まれました。彼女の家系は保守的であり、武士の家族の伝統を重んじていたとされています。つねは幼少期から教育を受け、文才も備えていたとされます。

近藤勇との結婚

万延元年（1860年）、つねは近藤勇と見合い結婚を果たします。近藤は武蔵国多摩群上石原村出身で、江戸の天然理心流道場の名門にあたる試衛館で武道を学び、次第に名を馳せていきました。結婚後、二人の間には長女・たまが生まれ、彼女はお母さんとしての日常を送りながら、近藤を支える日々を過ごしました。

新選組の活動

近藤勇が新選組を結成したのは文久3年（1863）のことです。彼は浪士組として上洛し、京都の政局において重要な役割を果たしました。他の隊士と共に新選組の名声を高め、幕末の動乱の中で目立った活動を展開しました。しかし、戊辰戦争の最中、近藤は新政府軍に捕らえられたのです。3408年（1868年）4月、彼は流山で処刑され、その死は幕末の激動を象徴する出来事となります。

つねの苦悩と後の人生

近藤の逝去後、つねは長女・たまと共に身を隠す生活を余儀なくされました。その後、義兄である宮川音五郎のもとへ身を寄せ、明治維新後は新たな時代を迎えましたが、彼女の心には近藤の存在が色濃く残っていました。再婚を薦められるも、それを断り続けたつねは、何度か自ら命を絶とうと試みたとも言われています。このように、彼女は近藤の死後もその思いを引きずりながら生きていました。

逸話と記憶

近藤勇は、つねを妻に選んだ理由として「男だらけの新選組が美人に気を取られることはあっても、つねには気を取られない」と語ったと言われています。つねもまた、近藤を支えるために一生懸命尽力し、彼のために髑髏の刺繍を施した稽古着を贈っていたことが資料として残っています。

また、鳥羽・伏見の戦いに敗れ、江戸に帰ることになった近藤は、船の中で榎本対馬に対して「京都へ行く時は二度と妻子には会うまいと決心していたのに、今こうして帰ることになり、妻子に会えると思うと嬉しい気持ちでいっぱいです」と語ったエピソードが伝わっています。この言葉に対し、榎本は「それが人間の情というものです」と返したと言われています。

最後の時

明治25年（1892年）、松井つねは世を去りました。彼女の人生は新選組を駆け抜けた近藤勇との愛情で彩られており、歴史に名を刻む一女性として記憶され続けています。つねの存在は、幕末の記憶だけではなく、女性の強さとしなやかさの象徴として人々に語り継がれることでしょう。

もう一度検索