松井良彦

松井良彦

松井良彦（まつい よしひこ、1956年5月6日 - ）は、日本の映画監督。

略歴

兵庫県西宮市出身。中学時代に映画『田園に死す』を観たことをきっかけに寺山修司と知り合う。1975年、石井聰亙とともに映画制作集団「狂映舎」の設立に参加し、石井聰亙監督作品『高校大パニック』や『狂い咲きサンダーロード』などで助監督や編集助手として活動。

1979年、初監督作品『錆びた缶空』を発表。この作品はホモセクシュアルの三角関係を描いたもので、石井聰亙が撮影を担当し、後に「ピンク四天王」と呼ばれる佐野和宏が主演を務めた。同作品は、ぴあ主催のオフシアター・フィルム・フェスティバル（現在のぴあフィルムフェスティバル）で入賞を果たし、審査員であった寺山修司と再会し、師事することになる。

1981年には『豚鶏心中』を発表。この作品では、『ゆきゆきて、神軍』を監督した原一男が撮影を担当。内容の過激さから一般の映画館での上映が困難であったが、寺山修司の好意により天井桟敷館で長期ロードショー公開された。

1988年、代表作となる『追悼のざわめき』を発表。製作は困難を極め、1983年のクランクインから5年の歳月を経て公開に至った。松井の最大の理解者であった寺山修司は、『追悼のざわめき』のクランクイン直前に他界しているが、脚本を読んだ際に「やっと映画がわかってきたよね」と松井を認める発言をしたという。中野武蔵野ホールでの公開では、同館開設以来の観客動員数を記録。しかし、その過激な内容から、1985年のトリノ国際映画祭に出品を予定されていたものの、イタリア税関でストップされるなど、数々の映画祭で上映禁止となる事態が発生した。試写を担当した映写技師が嘔吐したという逸話も残る。

日本のアンダーグラウンド・シネマの頂点とも言われる同作品は、一部から熱狂的な支持を受け、現在まで繰り返し上映されている。2007年12月21日にはDVDが発売され、2009年には海外のドイツ語圏（ドイツ、スイス、オーストリア）での発売が予定されている。

DVDに収録されたデジタルリマスター版では、ラストの音楽が桜田淳子の「わたしの青い鳥」から、上田現が書き下ろした「追悼のざわめき」に変更されている。上田現は本作に熱烈な共感を寄せていたため、オリジナル曲の提供に至った。

2007年には、22年ぶりとなる監督作品『どこに行くの?』（主演 柏原収史）を発表。同作は、第30回モスクワ国際映画祭正式招待作品/パースペクティブ・コンペティション部門にノミネートされ、2008年3月に日本公開された。

日本カルトムービーの重鎮として、『鬼畜大宴会』を監督した熊切和嘉など、一部の若手映画監督からの信頼が厚い。

フィルモグラフィー

錆びた缶空（1979年） - 監督・脚本・製作
狂い咲きサンダーロード（1980年） - 編集
豚鶏心中（1981年） - 監督・脚本
ミミズのうた（1983年、佐野和宏監督） - 出演
追悼のざわめき（1988年） - 監督・脚本
京極真珠（1997年、佐藤訪米監督） - 製作
どこに行くの?（2007年） - 監督・脚本

関連項目

大島渚（映画監督）
寺山修司（劇作家、演出家、映画監督、詩人）
高林陽一（映画監督）
石井聰亙（映画監督）
行定勲（映画監督、演出家）
束芋（現代美術家）
宮沢章夫（劇作家、演出家、小説家）
上田現（ミュージシャン、作曲家、作詞家）
原一男（ドキュメンタリー映画監督）
佐野和宏（松井良彦監督作品の全てに出演）
熊切和嘉（松井良彦監督と交流が深い）
柏原収史（男優）
森下くるみ（文筆家、女優）
封印作品（「追悼のざわめき」が封印作品としてあげられているが、誤り）

外部リンク

Yoshihiko Matsui official web site/ 松井良彦オフィシャルサイト
松井良彦 - allcinema
松井良彦 - 日本映画データベース
* Yoshihiko Matsui - IMDb（英語）

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