日野江城

日野江城の歴史と特徴

日野江城は、長崎県南島原市北有馬町に位置する、かつて存在した日本の城です。別名として日之江城、日ノ江城、火ノ江城、日ノ枝城とも呼ばれていました。現在は国の史跡に指定されています。

立地と構造

城は、南島原市のほぼ中央、有馬川の河口付近の小高い丘に築かれていました。南には有馬川、東には大手川が流れ、天然の要害となっています。縄張りは、北西に三の丸、東に二の丸を配し、中央の丘頂部に本丸が置かれた連郭式平山城です。1995年から2000年にかけて行われた発掘調査では、安土城以外では見られない直線階段や、海外の技術を取り入れた石組み、金箔を施した瓦などが発見され、その先進性と豊臣政権との密接な関係がうかがえます。

歴史

日野江城は、鎌倉時代前期の建保年間（1213年 - 1219年）に、高来郡を領していた藤原経澄によって築城されました。藤原経澄は、藤原北家で藤原純友の子孫であり、築城時に有間姓を称し、後に有馬と改称しました。有馬氏は、当初は島原半島南部の一勢力に過ぎませんでしたが、貴純の時代になると半島内の諸勢力を制圧し、戦国大名へと成長しました。貴純は、日野江城の支城として原城を築城しました。晴純の時代には、有馬氏の版図は最大となり、21万石を領するまでになりました。

しかし、後ろ盾となっていた大内氏が滅亡すると、龍造寺氏の圧迫を受けるようになります。13代目当主の晴信はキリシタン大名となり、城下にセミナリヨを建設し、寺社を破壊して城の築材としました。前述の発掘調査で出土した遺構は、晴信の時代のものであると考えられています。

江戸時代初期には、晴信は4万石を領し、日野江城は島原藩の藩庁となりました。しかし、慶長17年（1612年）に晴信が岡本大八事件に連座した罪で切腹となり、嫡男の直純が後を継ぎましたが、慶長19年（1614年）に日向国延岡城に移封となり、有馬氏は約400年にわたる在城に別れを告げました。

有馬氏が去った後、元和2年（1616年）に松倉重政が入城するまでは天領となりました。この間、鍋島氏、大村氏、松浦氏など肥前の諸大名が分担して城を警固しました。しかし、松倉氏は入封後、日野江城に不便を感じ、新たに島原城を建設し、日野江城は廃城となりました。

近代

1982年（昭和57年）7月3日、日野江城は国の史跡に指定されました。1995年から2000年にかけて発掘調査が行われ、貴重な遺構や遺物が発見されました。2006年初頭には、過疎による城地の農地利用の放棄や来訪者の減少により、荒廃が進んでいることが明らかになったため、合併前の北有馬町が修復と公園化整備を行おうとしましたが、工事中に損壊が指摘され中断しました。

また、世界遺産候補である長崎の教会群とキリスト教関連遺産の構成資産の一つに選ばれましたが、禁教期との関連性が薄いと判断され、構成資産から除外されました。

現在、城跡には八天狗が祀られており、島原の乱の後に入植した人々によって、果樹園や畑として整備されていました。

文化財

城跡からは、直線階段や石組み、金箔瓦などが出土しており、その一部は保存・展示されています。これらの遺物は、当時の建築技術や文化を知る上で貴重な資料となっています。

アクセス

島鉄バスの「島原～（深江-有家-原城-口之津）～加津佐海水浴場前」路線に日野江城入口停留所があり、そこから徒歩約15分で城跡に到着します。北有馬経由便の場合は橋口停留所で下車し、徒歩約5分です。

日野江城が舞台の作品

遠藤周作『有馬、日之枝城』
桑原水菜『まだれいなの十字架 西原無量のレリック・ファイル』(文庫版タイトル『遺跡発掘師は笑わない まだれいなの十字架』)

関連書籍

ベルナルディーノ・デ・アビラ・ヒロン『日本王国記』

参考文献

大伸類 編『日本城郭全集』人物往来社、1967年。
結城了悟「日野江城のキリシタン大名」『史跡日野江城』1981年。
外山幹夫「有馬氏と日野江城」『史跡日野江城』1981年。
外山幹夫 編『肥前・有馬一族』新人物往来社、1997年。

関連項目

日本の城一覧
九州・沖縄地方の史跡一覧
長崎の教会群とキリスト教関連遺産

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