松尾城 (信濃国伊那郡)

松尾城の歴史

松尾城は、長野県飯田市に位置し、かつて信濃国伊那郡に存在した日本の城です。この城は、鎌倉時代から戦国時代にかけて、小笠原氏の重要な拠点として機能しました。

小笠原氏の拠点として

小笠原氏は、元々阿波国の守護でしたが、小笠原貞宗の時代に建武の新政によって信濃国守護となりました。貞宗は伊那郡伊賀良荘の地頭であり、松尾の出身と伝えられています。松尾城は、国府に近い筑摩郡の井川館と並び、小笠原氏にとって重要な拠点の一つでした。

小笠原氏の分裂と抗争

応永7年（1400年）の大塔合戦で信濃守護の地位を失った小笠原氏は、小笠原政康によって再興されました。しかし、政康の死後、家督を巡る内乱が発生します。政康の兄の子である小笠原持長が家督を主張し、政康の子小笠原宗康を討ち取り、府中（深志）小笠原氏を興しました。一方、宗康は戦死する前に、弟の小笠原光康を後継者に指名し、松尾小笠原氏を確立しました。この内乱は、小笠原氏を三家に分裂させることになります。

府中から逃れた小笠原政秀（宗康の子）も鈴岡小笠原氏を興し、三家が並び立つことになりました。政秀は光康の死後、小笠原家の惣領を継承し、府中を奪還しましたが、小笠原家をまとめ上げることはできず、小笠原長朝（清宗の子）を養子に迎えて家督を譲っています。

松尾小笠原氏の小笠原家長（光康の子）は政秀と共闘していましたが、後に合戦となり戦死。家長の子小笠原定基は、明応2年（1493年）に政秀を暗殺し、鈴岡小笠原氏は滅亡しました。

武田氏、織田氏の侵攻と転封

天文3年（1534年）頃、松尾家の小笠原貞忠は府中家の小笠原長棟に敗れ、甲斐国に逃れて武田信玄に仕えました。しかし、天文23年（1554年）には、武田氏の伊那侵攻において小笠原信貴・小笠原信嶺父子が活躍し、松尾城を回復しました。

信嶺はその後、織田信長の甲州征伐の際に織田氏に降伏し、本能寺の変後には徳川氏の家臣となりました。徳川家康の関東移封に伴い、武蔵国本庄城に移り、松尾城は廃城となりました。

現在の松尾城

松尾城の主郭は標高487メートルに位置し、半島状の段丘に二つの郭が主要部を構成しています。現在、主郭と二の郭の一部は松尾鈴岡公園として整備されており、その歴史を今に伝えています。鈴岡小笠原氏の鈴岡城とは、毛賀沢川を挟んで向かい側に位置しています。

城主

小笠原光康
小笠原家長
小笠原定基
小笠原貞忠
小笠原信貴
小笠原信嶺

参考文献

信濃史学会編 『信州の山城 信濃史学会研究叢書3』 1993年
南原公平 著『信州の城と古戦場』 しなのき書房 2009年

もう一度検索