小笠原貞忠

小笠原貞忠：戦国時代の武将、松尾小笠原家当主の生涯

小笠原貞忠（おがさわら さだただ）は、生年不詳ながら、天文19年6月25日（1550年8月7日）に没したとされる戦国時代の武将です。信濃小笠原氏の分家である松尾小笠原家の当主であり、松尾城を居城としていました。通称は六郎、官位は弾正少弼、左衛門佐、左衛門尉、信濃守を称しました。父は小笠原定基、子に小笠原信貴がいます。

父・定基の動向と小笠原氏の情勢

父の定基は、京都の政情に明るく、大内氏などとも交流がありました。文亀元年（1501年）には、周防に亡命中の先代将軍足利義稙から、上洛の際には忠節を尽くすよう命じられていますが、実際に上洛は実現しませんでした。また、今川氏親の遠江侵攻に悩まされていた斯波義寛の意向を受け、府中家の小笠原貞朝と和睦し、遠江に派兵しましたが敗北しています。その後、貞朝の娘を娶ることで和睦しましたが、長くは続きませんでした。

三河出兵と東美濃攻略

永正3年（1506年）には、父の定基と共に今川氏親や伊勢宗瑞の要請に応じて三河国に出兵しています。また、文明5年（1473年）には、将軍足利義政の命により、祖父の小笠原家長が父の定基や木曾家豊（木曾義元の父）と共に東美濃攻略を行い、足利義視方の土岐成頼が京にいる隙に、美濃恵那郡の大井城や土岐郡の荻之島城（刈安城）を攻め落としました。これにより、恵那郡の中部と土岐郡の一部は、天文3年（1534年）まで松尾小笠原氏が駐留することになります。

松尾城陥落と甲斐への逃亡

しかし、天文3年（1534年）、府中家の小笠原長棟（貞朝の子）に松尾城を攻められると、貞忠は敗北し、東濃を放棄して武田氏を頼り甲斐国に逃亡しました。この敗北により、松尾小笠原氏は東濃における勢力を失うこととなりました。

小笠原貞忠の人物像と影響

小笠原貞忠は、戦国時代の動乱期において、信濃の国衆として勢力拡大に努めました。父の定基と共に、今川氏や他の武将たちと連携し、勢力を拡大しようとしましたが、最終的には府中家の小笠原氏との戦いに敗れ、東濃を離れることとなりました。その生涯は、戦国時代の激しい勢力争いの中で、地方豪族が生き残るための苦難を示すものと言えるでしょう。

参考資料

『戦国人名辞典』吉川弘文館 2006年
「寛政重修諸家譜 巻第195」
今井尭「小笠原系図」『日本史総覧』 3（中世 2）、新人物往来社、1984年。
後藤芳孝「小笠原氏の内訌をめぐって」（『松本市史研究』5号（1995年））

これらの資料は、小笠原貞忠の生涯や、当時の小笠原氏を取り巻く状況を知る上で重要な手がかりとなります。

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