松尾寺 (香川県琴平町)

松尾寺：金毘羅信仰と歴史の交差点

香川県仲多度郡琴平町に位置する松尾寺は、高野山真言宗に属する寺院です。象頭山普門院という山号と院号を持ち、新四国曼荼羅霊場第16番札所として知られています。本尊は釈迦如来で、ご詠歌は「みあぐれば　心もきよき　象頭山　金の御幣に　神ぞまします」と、神聖な雰囲気を漂わせる言葉で表現されています。

複雑な歴史：金毘羅信仰と神仏分離

松尾寺の創建は、役小角（神変大菩薩）が象頭山に登った際に、天竺霊鷲山に住む金毘羅（クンビーラ）の神験に遭ったことに由来すると伝えられています。しかし、長曽我部元親による讃岐国侵攻によって多くの古記録が焼失したため、確かな歴史は近世以降しか確認できません。

戦国時代、長尾城城主の弟である宥雅が当地に金光院を創立し、金毘羅神を勧請して祀りました。その後、長曽我部元親の侵攻により、宥雅は堺に亡命し、土佐の修験者宥厳が院主となります。元親の勢力が衰えると、高野山の僧宥盛が金毘羅権現信仰を広め、金光院が全山を支配するようになりました。境内は整備され、金毘羅大権現を祀る本社、薬師堂、観音堂などが建立されました。

江戸時代には、金毘羅大権現信仰は隆盛を極め、各地に分祀されました。しかし、明治維新の神仏分離令によって、松尾寺は大きな転換期を迎えました。金毘羅大権現は日本の神々とは関係ないとして、神仏分離の対象外とされましたが、金毘羅大権現は金刀比羅宮と改称され、松尾寺金光院は廃寺となり、多くの仏像や仏具は売却・焼却されました。

しかし、普門院松尾寺だけは、檀家の葬儀などを執り行っていたため存続が認められ、現在に至ります。

現存する境内と文化財

現在の松尾寺の境内には、山門、本堂、鐘楼堂、庫裡などの建物があります。また、県指定有形文化財に指定されている木造弘法大師座像（文保3年作）や木造五輪塔など、歴史的な価値の高い文化財が数多く残されています。これらの文化財は、松尾寺の歴史と信仰を伝える貴重な証となっています。

新四国曼荼羅霊場

松尾寺は、新四国曼荼羅霊場第16番札所でもあります。霊場巡りの際には、ぜひ訪れて、静寂な境内と歴史を感じてみてください。

まとめ

松尾寺は、金毘羅信仰と深く関わり、激動の時代を生き抜いてきた寺院です。歴史的建造物や文化財、そして静寂な境内は、訪れる人々に深い感動を与えてくれます。 神仏分離という大きな変革期を経験しながらも、現在もなお信仰の灯を灯し続けている松尾寺の歴史と文化に触れることで、日本の歴史の一端を垣間見ることができるでしょう。 境内には、歴史を物語る数々の建造物や仏像があり、それらは静かに時を刻み、来訪者を迎えています。

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